方位角を考慮した二輪型倒立振子の運動方程式導出

制御工学

みなさん,こんにちは
おかしょです.

以前,二輪型倒立振子の運動方程式をラグランジュ法で導出する記事を書きました.

この記事で求められた運動方程式を使って数値シミュレーションを行い,応答を確かめることもできました.しかし,ここで求めた運動方程式は方位角,つまり二輪型倒立振子の向きまでは考えていませんでした.そのため,二輪型倒立振子は一直線にしか進まず,目標の位置へとたどり着くことはできませんでした.

これではつまらないので,方位角を考慮した運動方程式を求めて,二輪型倒立振子を好きな場所に誘導することができるようにします.

この記事を読むと以下のようなことがわかる・できるようになります.

  • 二輪型倒立振子の方位角まで考慮した運動方程式
  • ラグランジュ法による運動方程式の求め方

この記事を読む前に

方位角についてはどうでも良いから,ただ運動方程式を求めたいという方は以下の記事で二輪型倒立振子の導出を解説しているので,そちらを参照してください.以下の記事を読まなくても,本記事は理解できるように書いているので,時間のない方は読まなくても大丈夫です.

座標系の定義

最初に,二輪型倒立振子の座標系は以下のようにとります.

上図において,\(w-z\)軸は機体固定座標系で,原点をタイヤの軸と振り子の中心を通る軸の交点としています.\(x-y\)軸は慣性座標系とします.

また,\(m\)と\(J\)はそれぞれ質量と慣性モーメントを表します.添え字の\(p\)と\(t\)は振り子pendulumのpとタイヤtireのtを表しています.\(J_{\psi}\)はz軸回りの慣性モーメントを表します.進行方向に向かって左側のタイヤを1,右側のタイヤを2として,\(r\)はタイヤの半径,\(L\)は二輪型倒立振子の回転中心から振り子の重心までの距離を表します.\(2b\)はタイヤの間の距離を表します.

\(\theta\)と\(\phi\)は振り子の角度とタイヤの回転角,\(\psi\)は機体の方位角を表します.

運動方程式の導出

冒頭から行っているように運動方程式はラグランジュ法で導出します.

一般化座標

まずは一般化座標を以下のように定義します.

\begin{eqnarray}
q =
\begin{bmatrix}
\phi & \theta & \psi
\end{bmatrix} ^T \tag{1}
\end{eqnarray}

ここで,\(\phi\)はタイヤの回転角の平均を表し,次式によって求めることができます.

\begin{eqnarray}
\phi = \frac{\phi_1 +\phi_2}{2} \tag{2}
\end{eqnarray}

この一般化座標を基に,この後の一般化力やエネルギーを求めます.

一般化力

一般化エネルギーを振り子の角度\(\theta\),タイヤの平均回転角度\(\phi\),方位角度\(\psi\)としたので,それらに対応したモーメントを求めます.

振り子に対して働くモーメントはないので,\(\theta\)に関するモーメントは0とします.各タイヤにはモーターによってトルク\(\tau_1,\ \tau_2\)が加わるので,タイヤの平均角度に関するモーメントはそれらの和となります.方位角\(\psi\)に関するモーメントを求めるためにはモーターによって生じるトルクを力に変換する必要があります.トルクを力に変換するには次式を用います.

\begin{eqnarray}
F = \frac{\tau}{r} \tag{3}
\end{eqnarray}

変換された力を用いて方位角\(\psi\)の回転中心に対するモーメントを求めます.したがって一般化力は以下のようになります.

\begin{eqnarray}
f =
\begin{bmatrix}
\tau_1 + \tau_2 & 0 & \frac{b}{r} (\tau_2-\tau_1)
\end{bmatrix} ^T \tag{4}
\end{eqnarray}

エネルギーの算出

次に二輪型倒立振子の各種エネルギーを算出します.

運動エネルギー

二輪型倒立振子がもつ運動エネルギーはタイヤのもつ運動エネルギー\(K_t\)と振り子の持つ運動エネルギー\(K_p\)の2つに分けられます.さらに各運動エネルギーは回転\(K_r\)と並進\(K_t\)の二つに分けることができます.

まずはタイヤの持つ回転運動エネルギーを求めると以下のようになります.

\begin{eqnarray}
K_{rt}&=&\frac{1}{2} J_{t}(\dot{\phi}+\dot{\theta})^2\\
&=&\frac{1}{2} J_{t}(\dot{\phi}^2+2\dot{\phi} \dot{\theta}+\dot{\theta}^2) \tag{5}
\end{eqnarray}

タイヤの回転角度は振り子が傾くと回転するため\(\phi+\theta\)と表せます.

次にタイヤの並進運動エネルギーを求めると

\begin{eqnarray}
K_{tt}&=&\frac{1}{2} m_t v_t^2 \tag{6}
\end{eqnarray}

ここで,\(v_t\)はタイヤの並進方向速度でタイヤの半径\(r\)とタイヤの回転角度\(\phi+\theta\)によって以下のように求めることができます.

\begin{eqnarray}
v_t&=&r(\dot{\phi}+\dot{\theta}) \tag{7}
\end{eqnarray}

したがって,タイヤの並進運動エネルギーは以下のようになります.

\begin{eqnarray}
K_{tt}&=&\frac{1}{2} m_t \{r(\dot{\phi}+\dot{\theta})\}^2\\
&=&\frac{1}{2} m_t r^2 (\dot{\phi}+\dot{\theta})^2\\
&=&\frac{1}{2} m_t r^2 (\dot{\phi}^2+2\dot{\phi} \dot{\theta}+\dot{\theta}^2) \tag{8}
\end{eqnarray}

次に振り子の運動エネルギーを求めます.

振り子の持つ回転運動エネルギーは以下のようになります.

\begin{eqnarray}
K_{rp}&=&\frac{1}{2} J_p \dot{\theta}^2+\ frac{1}{2} J_{\psi} \dot{\psi}^2 \tag{9}
\end{eqnarray}

並進運動エネルギーは

\begin{eqnarray}
K_{tp}&=&\frac{1}{2} m_p v_p^2 \tag{10}
\end{eqnarray}

となります.ここで,\(v_p\)は振り子の重心の並進速度を表しています.振り子の重心は振り子が傾くことによって各軸方向に動きます.つまり\(v_p\)は各軸方向の合成速度を表しています.

この合成速度\(v_p\)を求めるために,まずは振り子が角度\(\theta\)で傾き,方位角が\(\psi\)であった時の重心の位置\((x,\ y,\ z)\)を求めます.

\begin{eqnarray}
x&=&x_t +L \sin \theta \cos \psi\\
y &=& y_t +L \sin \theta \sin \psi \tag{11} \\
z &=& L \cos \theta
\end{eqnarray}

上式でz座標の算出の時以外は\(x_t\)および\(y_t\)を足しています.これは,車輪がxy平面上を動くためです.一方,z座標には車輪は動くことはないため加えていません.

上式で求められた振り子の重心位置を微分します.

\begin{eqnarray}
\dot{x}_p&=&\dot{x}_t+ L\dot{\theta} \cos \theta \cos \psi – L\dot{\psi} \sin \theta \sin \psi \\
\dot{y}_p &=&\dot{y}_t+L\dot{\theta} \cos \theta \sin \psi + L\dot{\psi} \sin \theta \cos \psi \tag{12} \\
\dot{z}_p &=& -L\dot{\theta} \sin \theta
\end{eqnarray}

ここで,

\begin{eqnarray}
\dot{x}_t &=& r(\dot{\phi} +\dot{\theta} )\cos \psi \\
\dot{y}_t &=& r(\dot{\phi} +\dot{\theta} )\sin \psi \tag{13}
\end{eqnarray}

であるから

\begin{eqnarray}
\dot{x}_p &=& r(\dot{\phi} +\dot{\theta} )\cos \psi + L(\dot{\theta} \cos \theta \cos \psi – \dot{\psi} \sin \theta \sin \psi) \\
\dot{y}_p &=& r(\dot{\phi} +\dot{\theta} )\sin \psi +L(\dot{\theta} \cos \theta \sin \psi +\dot{\psi} \sin \theta \cos \psi) \tag{14} \\
\dot{z}_p &=& -L\dot{\theta} \sin \theta
\end{eqnarray}

以上より,合成速度\(v_p\)は

\begin{eqnarray}
v_p^2 &=& \dot{x}^2_p+\dot{y}^2_p +\dot{z}^2_p \\
&=& \{r(\dot{\phi} +\dot{\theta} )\cos \psi + L(\dot{\theta} \cos \theta \cos \psi – \dot{\psi} \sin \theta \sin \psi)\}^2+\{r(\dot{\phi} +\dot{\theta} )\sin \psi +L(\dot{\theta} \cos \theta \sin \psi +\dot{\psi} \sin \theta \cos \psi)\}^2+(-L\dot{\theta} \sin \theta)^2\\
&=& r^2 (\dot{\phi} +\dot{\theta})^2 \cos^2 \psi+2Lr(\dot{\phi} +\dot{\theta})(\dot{\theta} \cos \theta \cos \psi – \dot{\psi} \sin \theta \sin \psi) \cos \psi + L^2 (\dot{\theta} \cos \theta \cos \psi – \dot{\psi} \sin \theta \sin \psi)^2+r^2 (\dot{\phi} +\dot{\theta})^2 \sin^2 \psi +2Lr(\dot{\phi} +\dot{\theta})(\dot{\theta} \cos \theta \sin \psi +\dot{\psi} \sin \theta \cos \psi)\sin \psi+L^2 (\dot{\theta} \cos \theta \sin \psi +\dot{\psi} \sin \theta \cos \psi)^2+L^2\dot{\theta}^2 \sin^2 \theta\\
&=& r^2 (\dot{\phi}+\dot{\theta})^2+2Lr(\dot{\phi}+\dot{\theta})(\dot{\theta} \cos \theta \cos^2 \psi-\dot{\psi} \sin \theta \sin \psi \cos \psi+\dot{\theta} \cos \theta \sin^2 \psi+\dot{\psi} \sin \theta \sin \psi \cos \psi)+L^2 (\dot{\theta}^2 \cos^2 \theta \cos^2 \psi-2\dot{\theta}\dot{\psi} \sin \theta \cos \theta \sin \psi \cos \psi+\dot{\psi}^2 \sin^2 \theta \sin^2 \psi+\dot{\theta}^2 \cos^2 \theta \sin^2 \psi+2\dot{\theta} \dot{\psi} \sin \theta \cos \theta \sin \psi \cos \psi+\dot{\psi}^2 \sin^2 \theta \cos^2 \psi)+L^2 \dot{\theta}^2 \sin^2 \theta\\
&=& r^2 (\dot{\phi}+\dot{\theta})^2+2Lr\dot{\theta}(\dot{\phi}+\dot{\theta}) \cos \theta + L^2 (\dot{\theta}^2 \cos^2 \theta + \dot{\psi}^2 \sin^2 \theta) + \dot{\theta}^2 \sin^2 \theta)\\
&=& r^2(\dot{\phi}^2+2\dot{\phi} \dot{\theta} + \dot{\theta}^2) + 2Lr\dot{\phi} \dot{\theta} \cos \theta +2Lr \dot{\theta}^2 \cos \theta +L^2 \dot{\theta}^2 +L^2 \dot{\psi}^2 \sin^2 \theta\\
&=& r^2 \dot{\phi}^2 +2(r^2 +Lr \cos \theta) \dot{\phi}\dot{\theta}+(r^2+2Lr \cos \theta +L^2) \dot{theta}^2 +L^2 \sin^2 \theta \dot{\psi}^2 \tag{15}
\end{eqnarray}

となります.上式を振り子の運動エネルギーの式に代入すると以下のようになります.

\begin{eqnarray}
K_{tp}&=&\frac{1}{2} m_p \{ r^2 \dot{\phi}^2 +2(r^2 +Lr \cos \theta) \dot{\phi}\dot{\theta}+(r^2+2Lr \cos \theta +L^2) \dot{theta}^2 +L^2 \sin^2 \theta \dot{\psi}^2\} \tag{16}
\end{eqnarray}

最後に,タイヤと振り子の運動エネルギーの総和を求めます.

\begin{eqnarray}
K&=& K_t +K_p\\
&=& (K_{rt}+ K_{tt}) +(K_{rp}+ K_{tp})\\
&=&\frac{1}{2}J_{t}(\dot{\phi}^2+2\dot{\phi}\dot{\theta}+\dot{\theta}^2)+\frac{1}{2}m_t r^2 (\dot{\phi}^2+2\dot{\phi}\dot{\theta}+\dot{\theta}^2)+\frac{1}{2}J_p \dot{\theta}^2+\ frac{1}{2} J_{\psi} \dot{\psi}^2 +\frac{1}{2} m_p \{ r^2 \dot{\phi}^2 +2(r^2 +Lr \cos \theta) \dot{\phi}\dot{\theta}+(r^2+2Lr \cos \theta +L^2) \dot{theta}^2 +L^2 \sin^2 \theta \dot{\psi}^2\}\\
&=& \left(\frac{1}{2}J_{t}+\frac{1}{2}m_{t}r^2+\frac{1}{2}m_{p}r^2 \right)\dot{\phi}^2+ \{J_t+m_t r^2+ m_p(r^2+Lr \cos \theta) \} \dot{\phi} \dot{\theta} +\left\{\frac{1}{2}J_{t}+ \frac{1}{2}m_{t}r^2+ \frac{1}{2}J_{p}+ \frac{1}{2}m_{p}(r^2+2Lr \cos \theta+L^2) \right\}\dot{\theta}^2+\left(\frac{1}{2} J_{\psi}+L^2 \sin^2 \theta \right)\dot{\psi}^2\\
&=& \frac{1}{2} \{J_t+(m_t+m_p)r^2\} \dot{\phi}^2+\{J_t+(m_t+m_p)r^2+m_p Lr \cos \theta\} \dot{\phi} \dot{\theta}+\frac{1}{2} \{J_t+(m_t+m_p)r^2 +J_p+m_p(2Lr \cos \theta +L^2)\} \dot{\theta}^2+ \left( \frac{1}{2}J_{\psi}+L^2 \sin^2 \theta \right) \dot{\psi}^2 \tag{17}
\end{eqnarray}

位置エネルギー

次に位置エネルギーを求めます.

運動エネルギーと同様に車輪と振り子の位置エネルギーをそれぞれ求めます.

車輪の位置エネルギー\(U_t\)は座標系の定義にあるように,タイヤの中心を基準としているため位置エネルギーは0となります.

\begin{eqnarray}
U_t &=& 0 \tag{18}
\end{eqnarray}

続いて,振り子の位置エネルギー\(U_p\)を求めると以下のようになります.

\begin{eqnarray}
U_p &=& m_p gz_p\\
&=& m_p gL \cos \theta \tag{19}
\end{eqnarray}

したがって,総位置エネルギー\(U\)は

\begin{eqnarray}
U &=& U_t+U_p\\
&=& m_p gL \cos \theta \tag{20}
\end{eqnarray}

となります.

損失エネルギー

損失エネルギーはタイヤと振り子にかかる空気の摩擦力によるものが考えられます.

したがって,損失エネルギー\(W\)は以下のように求めることができます.

\begin{eqnarray}
W &=& \frac{1}{2}\mu_{\phi} \dot{\phi}^2+\frac{1}{2}\mu_{\theta} \dot{\theta}^2+\frac{1}{2}\mu_{\psi} \dot{\psi}^2 \tag{21}
\end{eqnarray}

ここで,\(\mu_{\phi}, \mu_{\theta}, \mu_{\psi} \)は\(\phi\)軸方向,\(\theta\)軸方向,\(\psi\)軸方向にかかる空気の摩擦係数を表す.

ラグランジュ方程式

以上で一般化力とエネルギーの算出ができました.以上の結果を以下のラグランジュ方程式に代入します.

\begin{eqnarray}
\frac{d}{dt}\left( \frac{\partial L}{\partial \dot{q}}\right)- \frac{\partial L}{\partial q}+\frac{\partial W}{\partial \dot{q}} &=& f \tag{22}
\end{eqnarray}

ここで,\(L\)はラグランジアンと呼ばれるもので以下のように求められます.

\begin{eqnarray}
L &=& \frac{1}{2} \{J_t+(m_t+m_p)r^2\} \dot{\phi}^2+\{J_t+(m_t+m_p)r^2+m_p Lr \cos \theta\} \dot{\phi} \dot{\theta}+\frac{1}{2} \{J_t+(m_t+m_p)r^2 +J_p+m_p(2Lr \cos \theta +L^2)\} \dot{\theta}^2+ \left( \frac{1}{2}J_{\psi}+L^2 \sin^2 \theta \right) \dot{\psi}^2-m_p gL \cos \theta \tag{23}
\end{eqnarray}

ラグランジュ方程式を解くには,一般化座標の要素ごと\((\phi,\ \theta,\ \psi)\)に求める必要があります.

運動方程式

まずは振り子の角度\(\theta\)に関して,ラグランジュ方程式を解きます.

\begin{eqnarray}
\frac{d}{dt}\left( \frac{\partial L}{\partial \dot{\theta}}\right)- \frac{\partial L}{\partial \theta }+\frac{\partial W}{\partial \dot{\theta }} &=& 0 \tag{24}
\end{eqnarray}

左辺第1項:

\begin{eqnarray}
\frac{d}{dt}\left( \frac{\partial L}{\partial \dot{\theta}}\right) &=& \frac{d}{dt} [\{J_t+(m_t+m_p)r^2+m_p Lr \cos \theta\} \dot{\phi}+\{J_t+(m_t+m_p)r^2 +J_p+m_p(2Lr \cos \theta +L^2)\} \dot{\theta}]\\
&=& \{J_t+(m_t+m_p)r^2+m_p Lr \cos \theta\} \ddot{\phi}- m_p Lr \dot{\phi} \dot{\theta} \sin \theta +\{J_t+(m_t+m_p)r^2 +J_p+m_p(2Lr \cos \theta +L^2)\} \ddot{\theta}-2m_p Lr \dot{\theta}^2 \sin \theta \tag{25}
\end{eqnarray}

左辺第2項:

\begin{eqnarray}
\frac{\partial L}{\partial \theta } &=& -m_p Lr \dot{\phi} \dot{\theta} \sin \theta-m_p Lr \dot{\theta}^2 \sin \theta+2L^2 \dot{\psi}^2 \sin \theta \cos \theta+m_p gL \sin \theta \tag{26}
\end{eqnarray}

左辺第3項:

\begin{eqnarray}
\frac{\partial W}{\partial \dot{\theta }} &=& \mu_{\theta} \dot{\theta} \tag{27}
\end{eqnarray}

以上より

\begin{eqnarray}
\{J_t+(m_t+m_p)r^2+m_p Lr \cos \theta\} \ddot{\phi}- m_p Lr \dot{\phi} \dot{\theta} \sin \theta +\{J_t+(m_t+m_p)r^2 +J_p+m_p(2Lr \cos \theta +L^2)\} \ddot{\theta}-2m_p Lr \dot{\theta}^2 \sin \theta +m_p Lr \dot{\phi} \dot{\theta} \sin \theta+m_p Lr \dot{\theta}^2 \sin \theta-2L^2 \dot{\psi}^2 \sin \theta \cos \theta-m_p gL \sin \theta+\mu_{\theta} \dot{\theta}&=& 0\\
\{J_t+(m_t+m_p)r^2+m_p Lr \cos \theta\} \ddot{\phi}+\{J_t+(m_t+m_p)r^2 +J_p+m_p(2Lr \cos \theta +L^2)\} \ddot{\theta}-m_p Lr \dot{\theta}^2 \sin \theta -2L^2 \dot{\psi}^2 \sin \theta \cos \theta-m_p gL \sin \theta+\mu_{\theta} \dot{\theta}&=& 0 \tag{28}
\end{eqnarray}

次にタイヤの平均回転角度\(\phi\)についてラグランジュ方程式を解きます.

\begin{eqnarray}
\frac{d}{dt}\left( \frac{\partial L}{\partial \dot{\phi}}\right)- \frac{\partial L}{\partial \phi }+\frac{\partial W}{\partial \dot{\phi }} &=& \tau_1 +\tau_2 \tag{29}
\end{eqnarray}

左辺第1項:

\begin{eqnarray}
\frac{d}{dt}\left( \frac{\partial L}{\partial \dot{\phi}}\right) &=& \frac{d}{dt}[\{J_t+(m_t+m_p)r^2\} \dot{\phi}+\{J_t+(m_t+m_p)r^2+m_p Lr \cos \theta\} \dot{\theta}]\\
&=& \{J_t+(m_t+m_p)r^2\} \ddot{\phi}+\{J_t+(m_t+m_p)r^2+m_p Lr \cos \theta\} \ddot{\theta}-m_p Lr \dot{\theta}^2 \sin \theta \tag{30}
\end{eqnarray}

左辺第2項:

\begin{eqnarray}
\frac{\partial L}{\partial \phi } &=& 0 \tag{31}
\end{eqnarray}

左辺第3項:

\begin{eqnarray}
\frac{\partial W}{\partial \dot{\phi} } &=& \mu_{\phi} \dot{\phi} \tag{32}
\end{eqnarray}

以上より

\begin{eqnarray}
\{J_t+(m_t+m_p)r^2\} \ddot{\phi}+\{J_t+(m_t+m_p)r^2+m_p Lr \cos \theta\} \ddot{\theta}-m_p Lr\dot{\theta}^2 \sin \theta + \mu_{\phi} \dot{\phi} &=& \tau_1 +\tau_2 \tag{33}
\end{eqnarray}

最後に方位角\(\psi\)についてラグランジュ方程式を解きます.

\begin{eqnarray}
\frac{d}{dt}\left( \frac{\partial L}{\partial \dot{\psi}}\right)- \frac{\partial L}{\partial \psi }+\frac{\partial W}{\partial \dot{\ psi }} &=& \frac{b}{r} (\tau_2-\tau_1) \tag{34}
\end{eqnarray}

左辺第1項:

\begin{eqnarray}
\frac{d}{dt}\left( \frac{\partial L}{\partial \dot{\psi}}\right) &=& \frac{d}{dt}\left\{2\left(\frac{1}{2} J_{\psi}+ L^2 \sin^2 \theta \right)\dot{\psi} \right\}\\
&=& (J_{\psi}+ 2L^2 \sin^2 \theta)\ddot{\psi} +4L^2\dot{\theta} \dot{\psi} \sin \theta \cos \theta \tag{35}
\end{eqnarray}

左辺第2項:

\begin{eqnarray}
\frac{\partial L}{\partial \psi } &=& 0 \tag{36}
\end{eqnarray}

左辺第3項:

\begin{eqnarray}
\frac{\partial W}{\partial \dot{\psi} } &=& \mu_{\psi} \dot{\psi} \tag{37}
\end{eqnarray}

以上より

\begin{eqnarray}
(J_{\psi}+ 2L^2 \sin^2 \theta)\ddot{\psi} +4L^2 \dot{\theta} \dot{\psi} \sin \theta \cos \theta+ \mu_{\psi} \dot{\psi} &=& \frac{b}{r} (\tau_2-\tau_1) \tag{38}
\end{eqnarray}

倒立振子の位置

以上の運動方程式を用いることでタイヤの回転角度\(\phi\),振り子の傾斜角\(\theta\),方位角\(\psi\)を求めることができます.

さらに,これらの状態量を用いることで倒立振子の位置を以下の式によって求めることができます.

\begin{eqnarray}
\dot{x}_t &=& r(\dot{\phi} +\dot{\theta} )\cos \psi \\
\dot{y}_t &=& r(\dot{\phi} +\dot{\theta} )\sin \psi \tag{39}
\end{eqnarray}

これは式(13)で求めた車輪の座標と全く同じものです.この式を積分することで座標を求めることができます.

まとめ

求められた二輪型倒立振子の運動方程式をまとめると以下のようになります.

\begin{eqnarray}
\{J_t+(m_t+m_p)r^2+m_p Lr \cos \theta\} \ddot{\phi}+\{J_t+(m_t+m_p)r^2 +J_p+m_p(2Lr \cos \theta +L^2)\} \ddot{\theta}-m_p Lr \dot{\theta}^2 \sin \theta -2L^2 \dot{\psi}^2 \sin \theta \cos \theta-m_p gL \sin \theta+\mu_{\theta} \dot{\theta}&=& 0\\
\{J_t+(m_t+m_p)r^2\} \ddot{\phi}+\{J_t+(m_t+m_p)r^2+m_p Lr \cos \theta\} \ddot{\theta}-m_p Lr\dot{\theta}^2 \sin \theta + \mu_{\phi} \dot{\phi} &=& \tau_1 +\tau_2\\
(J_{\psi}+ 2L^2 \sin^2 \theta)\ddot{\psi} +4L^2 \dot{\theta} \dot{\psi} \sin \theta \cos \theta+ \mu_{\psi} \dot{\psi} &=& \frac{b}{r} (\tau_2-\tau_1)
\end{eqnarray}

続けて読む

この運動方程式を使うことで数値シミュレーションをすることができます.

今回求めた運動方程式を使って数値シミュレーションを行った結果については以下の記事で解説しているので,続けて読んでみてください.

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