非線形のシステムの安定判別を行うリアプノフの安定定理とは

制御工学

みなさん,こんちは
おかしょです.

線形のシステムの場合は安定判別を行う方法はさまざまあり,大学の授業でもやるほど基礎的な内容です.

しかし,システムが非線形の運動方程式で表される場合は線形の安定判別法では判断ができません.

この記事では非線形のシステムの安定判別法として有名なリアプノフの安定定理について解説します.

この記事を読むと以下のようなことがわかる・できるようになります.

  • リアプノフ関数とは
  • 非線形なシステムの安定性を証明する方法

 

リアプノフ関数とは

まずはリアプノフ関数とはどのような関数のことを言うのかを解説します.

リアプノフ関数というのは以下のような関数のことを言います.

  1. 連続な関数
  2. 正定な関数
  3. 微分すると負になる関数

これだけを言われても何のことかわからない方が多いと思いますので,一つずつ解説していきます.

 

連続な関数とは

連続な関数とはどういう関数のことを言うのかご存知でしょうか.

これは図で表した方がわかりやすいかもしれません.

連続な関数とそうでない関数を図で表すと以下のようになります.

青い線で示した関数が連続関数でオレンジ色の線で示した関数が連続ではない関数を表しています.

青い線の関数は式で表すと以下のようになります.

$$ y = x $$

オレンジ色の線の関数は式では以下のように表されます.

\begin{eqnarray}
y = 1\ (x\leq 0)\\
y = -1\ (x> 0)
\end{eqnarray}

以上の式を見ると分かるように連続関数はxの値によって式が変化することはなく,反対に連続ではない場合はxの値によって式が変化します.このような連続ではない関数のことを離散関数と呼びます.

また,連続関数はxがどのような値であっても微分が可能ですが,離散関数の場合は原点では微分ができません.

関数が連続か離散かを見分ける時は,微分が可能かどうかを判断基準にしてもいいかもしれません.

 

正定な関数とは

正定な関数というのは,xがどのような値であっても関数yが0より大きくなる関数のことを言います.
また,0以上となる時は半正定と言います.

反対に,-yの値が正定となる時を負定,半正定となる時を反負定と呼びます.

つまり,先程の図に示した青い線の関数は正定でも不定でもないということになります.それではどのような関数が正定となるのでしょうか.

正定関数についても図を使って解説していきます.

まずは青い線の関数から見ていきます.

青い線の関数は2次関数と呼ばれる関数で,図を見ると明らかなようにyが常に正となっています.なので,この関数は正定な関数であるということができます.

ただ,ここで勘違いしやすいのが2次関数であればすべて正定な関数ではないということです.この図で示された2次関数は「頂点のy座標が正で下に凸な形」であるから正定なだけであって,下に凸な形でも頂点のy座標が負であれば正定な関数ではありません.また,頂点のy座標が正であっても上に凸な関数であれば正定な関数とは言えませんので気を付けてください.

次にオレンジ色の線を見てみます.

オレンジ色の線で示される関数は,完全にyが負の領域があるので正定な関数とは言えません.このような関数は3次関数などを表していて,次数が奇数の場合は正定な関数にはなりません.

このような振動的な関数は正定にはならないのかと聞かれると,そうとも言い切れません.

緑色の線で表された関数を見ると,常にyの値が正となっています.つまり,この関数は正定であると言えます.

この関数は三角関数なのですが,図にあるように上にずれている場合は正定な関数となります.

このように,正定な関数というのはいろいろな形がありますが,2次関数が正定かどうかの判断が最もしやすいので,リアプノフ関数には2次関数が選ばれることが多いです.

 

微分すると負になる関数とはどういうことか

これがリアプノフの安定定理では最も重要な性質です.

リアプノフ関数を微分して負にならなければ,そのシステムは安定とは言えません.

それでは,なぜリアプノフ関数を微分して負になればシステムが安定だと言えるのでしょうか.

例えば,リアプノフ関数が以下の図で表されるような2次関数\((y=x^2)\)であったとします.

このとき,この関数を時間微分した結果が負(負定)となった場合,状態量xが平衡点(安全な状態)ではなかったとしても,時間微分した結果が負なので時間が経過すればリアプノフ関数の原点である平衡点へと戻ることができます.

このように,リアプノフ関数の時間微分値が負であればボールがお椀の上を転がるように状態量xは平衡点へと戻っていき,安定であるということができます.

よく勘違いされるのが,リアプノフ関数を状態量で微分してしまうことです.

状態量ではなく時間で微分しなければならないので注意してください.

 

まとめ

この記事ではリアプノフ関数とはどのようなものなのかを解説しました.
まとめると,リアプノフ関数というのは連続で正定で,時間微分すると負になる関数のことです.

リアプノフ関数は非線形制御では基本となる理論なので,制御工学について本格的にやっていこうと考えている方は必ず覚えておくようにしてください.覚えていないと読めない論文などもあるので気を付けましょう.

 

続けて読む

リアプノフ関数を使用したリアプノフの安定定理は非線形なシステムの安定性を解析できます.

以下の記事では簡単な非線形システムの例としてワンリンクアームロボットの運動方程式を導出しています.

この運動方程式を利用すれば,リアプノフ関数の確認ができるので続けて参考にしてください.

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それでは最後まで読んでいただきありがとうございました.

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