みなさん,こんにちは
おかしょです.
このブログでは電子工作や制御工学に関する記事を公開してきました.
私は現在,大学院生で制御工学を専門としています.
制御工学の勉強をしていると,制御器の性能を比較したくなります.
その時,どのような制御対象に制御器を適用するか迷うことがよくあります.
そのようなときはとりあえず,マス・スプリング・ダンパーシステムに適用することが多いです.
そこで,マス・スプリング・ダンパーシステムの運動方程式の導出方法を解説します.
この記事を読むと以下のようなことがわかる・できるようになります.
- マス・スプリング・ダンパーシステムとは
- マス・スプリング・ダンパーシステムの運動方程式
- マス・スプリング・ダンパーシステムの状態方程式
この記事を読む前に
この記事では運動方程式を導出しますが,その時はオイラー法を使用します.
オイラー法ではなくラグランジュ法の運動方程式の導出を行いたい方は以下の記事で解説しているので,参考にしてください.
マス・スプリング・ダンパーシステムとは
まずはマス・スプリング・ダンパーシステムとはどのようなシステムなのかを説明します.
「マス」とは「mass」のことで「質量」という意味です.
「スプリング」は「spring」で「ばね」のことです.
「ダンパー」とは「dumper」で「減衰機」のことです.
「マス」,「スプリング」,「ダンパー」の3つで構成されたシステムのことを言います.
文字だけでは理解しづらいと思うので,以下にマス・スプリング・ダンパーシステムの図を示します.
このようなシステムを「マス・スプリング・ダンパーシステム」と言います.
運動方程式の導出
ここからはマス・スプリング・ダンパーシステムの運動方程式の導出を行います.
上の図でカート部分の質量は\(m\),ばねの弾性係数は\(k\),減衰機の減衰係数は\(c\)とします.
運動方程式はニュートン・オイラー法で導出します.
このシステムは並進方向にしか動かないので,以下のようなニュートン・オイラー法の並進運動方程式を利用します.
$$ m\ddot{x}=F $$
この式で\(x\)と表されているのは,カートの位置のことです.
この式で求めなければならないのは,右辺の\(F\)です.
この項はばねによる復元力と減衰機による減衰力が入ります.
従って
$$ F = -kx-c\dot{x} $$
となります.
これを最初の式に代入することで,マス・スプリング・ダンパーシステムの運動方程式が以下のように求められます.
$$ m\ddot{x}=-kx-c\dot{x} $$
運動方程式から状態方程式を求める
現代制御工学を学んでいると,運動方程式は状態方程式の形で表されることが一般的です.
そこで,先程の運動方程式から状態方程式を求めます.
状態変数を以下のようにとります.
\begin{eqnarray}
\mathbb{x}=
\begin{bmatrix}
x\\
\dot{x}
\end{bmatrix}
\end{eqnarray}
このように状態変数をとった場合,状態方程式は以下のように求められます.
\begin{eqnarray}
\frac{d}{dt}
\begin{bmatrix}
x\\
\dot{x}
\end{bmatrix}
=
\begin{bmatrix}
0&1\\
-\frac{k}{m} & -\frac{c}{m}
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
x\\
\dot{x}
\end{bmatrix}
\end{eqnarray}
となります.
制御をすることを考えると,入力が必要です.
そこで,先程のシステムに新たに力を加えられるように以下のようにします.
青い矢印で表される力の大きさを\(F\)とします.
力\(F\)を追加したシステムの状態方程式は以下のように求められます.
\begin{eqnarray}
\frac{d}{dt}
\begin{bmatrix}
x\\
\dot{x}
\end{bmatrix}
=
\begin{bmatrix}
0&1\\
-\frac{k}{m} & -\frac{c}{m}
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
x\\
\dot{x}
\end{bmatrix}
+
\begin{bmatrix}
0\\
1
\end{bmatrix}
F
\end{eqnarray}
この\(F\)に制御器で求められた制御入力を代入することで,マス・スプリング・ダンパーシステムの動きを制御することができます.
まとめ
この記事ではマス・スプリング・ダンパーシステムの運動方程式を求めて,現代制御でも利用しやすいように状態方程式の形に変換しました.
続けて読む
この記事で解説したマス・スプリング・ダンパーシステムの運動方程式を利用して数値シミュレーションを行いました.
数値シミュレーションを行う方法などを以下の記事で解説しているので,続けて読んでみてください.
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それでは最後まで読んでいただきありがとうございました.
コメント
[…] 以前,マス・スプリング・ダンパーの運動方程式を導出しました. […]