離散時間システムの安定範囲が単位円内で表される理由を証明

制御工学

みなさん,こんにちは
おかしょです.

連続時間システムの安定領域は左半平面です.これは制御工学の最初に学ぶことの一つです.

しかし,連続時間システムを離散化すると安定領域は単位円内に変化します.

この記事では,離散化すると安定領域が変化する理由を解説・証明します.

この記事を読むと以下のようなことがわかる・できるようになります.

  • 離散化すると安定領域が単位円内となる理由

 

この記事を読む前に

そもそも離散化について詳しく知らない方は以下の記事で解説しているので,そちらを先に読んでおくことをおすすめします.

こちらの記事で使用している数式を使って証明しているので,ご確認ください.

 

離散化するための変換式

こちらの記事の式(11)を使うことで連続時間のシステムを離散時間に変換することができます.

この式を式変形して\(z\)について解くと以下のようになります.

\[
\begin{eqnarray}
s&=&\frac{2(z-1)}{T_{s}(z+1)}\\
T_{s}(z+1)&=&\frac{2}{s}(z-1)\\
T_{s}z+T_{s}&=&\frac{2}{s}z-\frac{2}{s}\\
z(T_{s}-\frac{2}{s})&=&-T_{s}-\frac{2}{s}\\
z&=&\frac{-T_{s}-\frac{2}{s}}{T_{s}-\frac{2}{s}}\\
&=&\frac{T_{s}+\frac{2}{s}}{\frac{2}{s}-T_{s}}\\
&=&\frac{2+T_{s}s}{2-T_{s}s} \tag{1}
\end{eqnarray}
\]

この式を用いて安定領域である左半平面を離散化するとどうなるのかを確認します.

 

離散化した際の安定領域の証明

冒頭でも述べましたが,連続時間システムでは左の図で示されるように左半平面が安定領域となります.

この領域を先ほど求めた式(1)を利用して離散時間に変換します.

離散時間に変換する方法としては上の図の安定領域の境界を式(1)で変換します.

手始めに原点\((s=0)\)を変換してみます.

式(1)に\(s=0\)を代入します.

\begin{eqnarray}
z&=&\frac{2+T_{s}\times 0}{2-T_{s}\times 0}\\
&=&\frac{2}{2}=1 \tag{2}
\end{eqnarray}

このように連続時間の原点は離散時間にすると1に変換されます.

さて,左半平面の領域を変換するために連続時間の安定領域を式で表現します.すると以下のようになります.

\begin{eqnarray}
s=re^{j\phi} \tag{3}
\end{eqnarray}

このような式の形は円を表すために用いることが多く,\(r=\infty,\ \pi / 2\leq \phi \leq 3\pi/2\)とすることで,左半平面を表現することができます.

これを式(1)に代入して変換します.

\begin{eqnarray}
z&=&\frac{2+T_{s}\times re^{j\phi}}{2-T_{s}\times re^{j\phi}}
\end{eqnarray}

ここで「オイラーの公式」を利用します.

$$ e^{j\theta}=\cos \theta +j\sin \theta $$

\begin{eqnarray}
z&=&\frac{2+T_{s}\times r(\cos \phi+j\sin \phi)}{2-T_{s}\times r(\cos \phi+j\sin \phi)}
\end{eqnarray}

この式の分母を有利化します.

\begin{eqnarray}
z&=&\frac{2+T_{s}r\cos \phi+jT_{s}r\sin \phi}{2-T_{s}r\cos \phi-jT_{s}r\sin \phi)}\\
&=&\frac{2+T_{s}r\cos \phi+jT_{s}r\sin \phi}{2-T_{s}r\cos \phi-jT_{s}r\sin \phi} \frac{2-T_{s}r\cos \phi+jT_{s}r\sin \phi}{2-T_{s}r\cos \phi+jT_{s}r\sin \phi}\\
&=&\frac{(2+T_{s}r\cos \phi)(2-T_{s}r\cos \phi)+4jT_{s}r\sin \phi-(T_{s}r\sin \phi)^{2}}{(2-T_{s}r\cos \phi)^2+(T_{s}r\sin \phi)^{2}}\\
&=&\frac{4-(T_{s}r\cos \phi)^{2}+4jT_{s}r\sin \phi-(T_{s}r\sin \phi)^{2}}{4-4T_{s}r\cos \phi+(T_{s}r\cos \phi)^{2}+(T_{s}r\sin \phi)^{2}}\\
&=&\frac{4-T_{s}^{2}r^{2}+4jT_{s}r\sin \phi}{4-4T_{s}r\cos \phi+T_{s}^{2}r^{2}}\tag{4}
\end{eqnarray}

まずはこの式に\(\phi=\pi/2\)を代入します.

\begin{eqnarray}
z&=&\frac{4-T_{s}^{2}r^{2}+4jT_{s}r}{4+T_{s}^{2}r^{2}}\tag{5}
\end{eqnarray}

この式にrを0~\(\infty\)まで変化させて代入していきます.

これを\(\phi=3\pi/2\)でも同じことを行います.

このようにしてグラフ化すると以下のように,左半平面の領域が単位円に変換されます.

以上のようにすることで連続時間の安定領域である左半平面を離散化することで単位円に変換することができました.

 

まとめ

この記事では離散時間システムの時に安定領域が単位円内になることを証明しました.

離散化はロボットを扱う上で非常に重要になるので,今回求めた安定領域は非常に大切です.

ロボットを作ろうと思っている方にとって助けになれば幸いです.

 

続けて読む

ロボットを作りたいと考えている方は,以下の記事でロボットを作る手順を解説しているので続けて読んでみてください.

Twitterでは記事の更新情報や活動の進捗などをつぶやいているので気が向いたらフォローしてください.

それでは最後まで読んでいただきありがとうございました.

コメント

タイトルとURLをコピーしました