みなさん,こんにちは.
おかしょです.
この記事を読むと以下のようなことがわかる・できるようになります.
- 位相線図とは
- 位相線図の書き方
- 位相線図の読み方
この記事を読む前に
この記事では位相線図の書き方を説明する際に伝達関数を使用します.
そのため,伝達関数に関する基礎知識はあった方が理解しやすいと思います.
以下の記事で伝達関数に関して解説しているので先に読んでおくことをおすすめします.
位相線図とは
位相線図というのは,横軸に周波数・縦軸に位相をとった片対数グラフのことを言います.
このグラフを見ることで,システムが入力に対してどのくらい遅れて応答するのかを示します.
例えば,ニュースなどを見ていると生中継でスタジオと中継先で音声に遅れが生じることがあります.
特に海外との中継の場合は遅れがひどいです.
このように,入力に対して遅れるシステムのことを位相が遅れていると言います.
スタジオからの声が中継先に届くまでの状況を考えた場合,スタジオからの音声が入力,中継先に届く音声が出力ということになります.
このような位相の遅れをシステムがどの程度持っているのかを周波数ごとに表したものが位相線図になります.
位相線図の書き方
それでは,実際に位相線図を書いてみましょう.
以前,ゲイン線図の書き方を解説しましたが,位相線図はゲイン線図よりも簡単に描くことができます.
ゲイン線図の時と同様で,位相線図は周波数領域で表現されるので,複素領域(s平面)で表現される伝達関数を変換する必要があります.
例えば,以下のような伝達関数で表現されるシステムがあったとします.
$$ G(s)=\frac{K}{Ts+1} $$
この伝達関数をフーリエ変換するために,\(s=j\omega\)とします.
$$ G(j\omega)=\frac{K}{1+jT/omega} $$
分母を有理化すると以下のようになります.
\begin{eqnarray} G(j\omega) &=& \frac{K}{1+jT\omega} \cdot \frac{1-jT\omega}{1-jT\omega}\\ &=& \frac{K(1-jT\omega)}{1+T^{2}\omega^{2}}\\ &=&\frac{K}{1+T^{2}\omega^{2}}-j\frac{KT\omega}{1+T^{2}\omega^{2}} \end{eqnarray}
この式から,システムの位相を求めます.
位相を求める公式は以下になります.
$$ \angle G(j\omega)=\tan^{-1} \frac{I(j\omega)}{R(j\omega)} $$
ここで,\(R(j\omega)\)は先ほどの周波数伝達関数の実部,\(I(j\omega)\)は虚部を表しています.
従って,例のようなシステムの位相は以下のようになります.
\begin{eqnarray} \angle G(j\omega) &=& \tan^{-1} \frac{I(j\omega)}{R(j\omega)}\\ &=& \tan^{-1} \frac{-\frac{KT\omega}{1+T^{2}\omega^{2}}}{\frac{K}{1+T^{2}\omega^{2}}}\\ &=& -\tan^{-1} T\omega \end{eqnarray}
以上のことから,位相には\(K\)の数値は関係なく,\(T\)によってシステムの位相が決まることがわかります.
ここでは,\(T=1\)として考えていきます.
例えば,周波数が非常に小さい時は位相はどうなるでしょうか.
上の式から考えると,\(-\tan^{-1} 0=0\)であるから0に収束していくことがわかります.
反対に,周波数が大きい時はどうでしょうか.
アークタンジェントの計算では傾きを求めることができます.
周波数が大きい時は,傾きが非常に大きくなり,上式よりマイナス符号がつくので位相は-90°となります.
周波数が小さい帯域では0に収束し,大きい帯域では-90度に収束することがわかりました.
あとは,0から-90へとどのように変化していくのかがわかれば位相線図が描けそうです.
このとき,考えたいのは\(-\tan^{-1} 1=-45^{\circ}\)ということです.
つまり今回の例では
$$ \omega=1 $$
となる時に,位相は\(-45^{\circ}\)になります.
次に,\(-\tan^{-1} \frac{1}{2}=-30^{\circ}\)となる時を考えます.
このときの周波数は
$$ \omega=\frac{1}{2} = 0.5$$
です.
以上のことをまとめると,位相線図は
- 周波数が低い帯域では\(0^{\circ}\)に収束する.
- \(\omega=0.5\)の時,\(-30^{\circ}\)となる.
- \(\omega=1\)の時,\(-45^{\circ}\)となる.
- 周波数が大きい帯域では\(-90^{\circ}\)に収束する.
という特徴があります.
これを図に描くと以下のようになります.
上の図で,青い線は近似した位相線図,オレンジ色の線は近似せずに描いた位相線図になります.
両者で多少の誤差はありますが,近似した位相線図でもだいたいの特性は読み取ることができます.
位相線図からわかること
位相線図の見方を上の位相線図を例にして解説していきます.
まず,低周波数帯域では位相が0となっているため,遅れはないことがわかります.
反対に高周波数帯域では位相が\(-90^{\circ}\)となっているため,遅れが生じていしまいます.
例えば,このシステムに高周波数の正弦波(sin波)が入力されたとします.
このとき,システムの応答は入力した正弦波に対して半周期分遅れることになります.
まとめ
この記事では位相線図の書き方や読み方を解説しました.
最後にまとめておくと,位相線図は周波数伝達関数の実部と虚部の比から求められ,入力に対する応答の遅れを示します.
続けて読む
この位相線図ともう一つのボード線図であるゲイン線図を利用すれば,システムや制御器の性能を知ることができます.
以下の記事ではもう一つのボード線図のゲイン線図について解説しています.
興味のある方は参考にしてください.
Twitterでは記事の更新情報や活動の進捗などをつぶやいているので気が向いたらフォローしてください.
最後まで読んでいただきありがとうございました.
コメント
[…] このボード線図の書き方について知りたい方は,以下の記事を参考にしてください.ゲイン線図の書き方位相線図の書き方 […]
[…] 事では,ゲイン線図の書き方や見かたなどを解説しています.位相線図の書き方を知りたい方は以下の記事を参考にしてください.[ボード線図] 位相線図とは・書き方から学んで理解する […]