みなさん,こんにちは
おかしょです.
制御工学の学習をしていると,古典制御工学は周波数領域で運動方程式を表すことが多いですが,イメージしやすくするために時間領域に変換することが多いです.
時間領域で運動方程式を表した場合,その運動方程式は微分方程式で表されます.
この記事ではその微分方程式を解く方法を解説します.
微分方程式の中でも同次微分方程式と呼ばれる,右辺が0となっている微分方程式の解き方を説明します.
この記事を読むと以下のようなことがわかる・できるようになります.
- 特性方程式の求め方
- 同次微分方程式の解き方
同次微分方程式を解く手順
同次微分方程式というのは,以下のような微分方程式のことを言います.
$$ a \frac{d^{2} x}{dt^2}+b\frac{dx}{dt}+cx= 0$$
このような同次微分方程式を解くための一連の流れは以下のようになります.
- 特性方程式を求める
- 一般解を求める
- 初期値を代入して任意定数を求める
たったこれだけです.
微分方程式と聞くと難しそうに聞こえますが,案外簡単に解けます.
同次微分方程式の解き方
ここからは,上に示した手順に沿って微分方程式の解き方を解説していきます.
特性方程式を求める
まずは特性方程式を求めます.
特性方程式を求めるには,微分方程式を解いた解が\(x=e^{\lambda t}\)であったと仮定します.
このとき,この解を微分方程式に代入すると以下のようになります.
\begin{eqnarray}
a \frac{d^{2} e^{\lambda t}}{dt^2}+b\frac{de^{\lambda t}}{dt}+ce^{\lambda t}&=& 0\\
(a\lambda ^2+b\lambda +c)e^{\lambda t} &=& 0
\end{eqnarray}
このとき,\(e^{\lambda t}\)は時間tを無限大にすれば漸近的に0にはなりますが,厳密には0にならないので
$$ a\lambda ^2+b\lambda +c = 0 $$
とした,この方程式が成り立つ必要があります.
この方程式を特性方程式と言います.
一般解を求める
特性方程式を求めることができたら,次は一般解を求めます.
一般解というのは,初期条件などを考慮せずにどのような条件においても微分方程式が成り立つ解のことを言います.
この一般解を求めるためには,まず特性方程式を解く必要があります.
先程の特性方程式の解は解の公式を用いると以下のようになります.
$$ \lambda_{\pm} = \frac{-b\pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a} $$
特性方程式が2次だったので,その解は2つ存在するはずです.
しかし,分子の第2項\(\sqrt{b^2-4ac}\)が0となる時は重解となるので,解は1つしか得られません.そのようなときは一般解の求め方が少し特殊なので,場合分けをしてそれぞれ解説していきたいと思います.
\(b^2-4ac>0\)の時
ここからは具体的な数値例も示して解説していきます.
今回の\(b^2-4ac>0\)となる条件を満たす微分方程式には以下のようなものがあります.
$$ \frac{d^{2} x}{dt^2}+5\frac{dx}{dt}+6x= 0$$
これの特性方程式を求めて,解を求めると\(\lambda=-2,\ -3\)となります.
最初に特性方程式を求めるときに微分方程式の解を\(x=e^{\lambda t}\)としていました.
従って,一般解は以下のようになります.
$$ x = Ae^{-2t}+Be^{-3t} $$
ここで,A, Bは任意の定数とします.
\(b^2-4ac=0\)の時(重解・重根)
特性方程式の解が重根となるのは以下のような微分方程式の時です.
$$ \frac{d^{2} x}{dt^2}+4\frac{dx}{dt}+4x= 0$$
このときの特性方程式の解は重解で\(\lambda = -2\)となります.
このときの一般解は先ほどと同様の書き方をすると以下のようになります.
$$ x = Ce^{-2t} $$
このとき,Cは任意の定数とします.
しかし,これでは先ほどの一般解のように解が二つの項から成り立っていません.そこで,一般解を以下のようにCが時間によって変化する変数とします.
$$ x = C(t)e^{-2t} $$
このようにしたとき,C(t)がどのような変数になるのかが重要です.
ここで,この一般解を微分方程式に代入してみます.
$$\frac{d^{2} x}{dt^2}+4\frac{dx}{dt}+4x = \frac{d^{2} (C(t)e^{-2t})}{dt^2}+4\frac{d(C(t)e^{-2t})}{dt}+4(C(t)e^{-2t}) $$
ここで,一般解の微分値を先に求めると,以下のようになります.
$$ \frac{d(C(t)e^{-2t})}{dt} = \frac{dC(t)}{dt}e^{-2t}-2C(t)e^{-2t} $$
\begin{eqnarray}
\frac{d^{2} (C(t)e^{-2t})}{dt^2} &=& \frac{d}{dt} \left\{\frac{dC(t)}{dt}e^{-2t}-2C(t)e^{-2t} \right\} \\
&=& \left\{\frac{d^2 C(t)}{d^2 t}e^{-2t}-2\frac{dC(t)}{dt}e^{-2t} \right\}+\left\{-2\frac{dC(t)}{dt}e^{-2t}+4C(t)e^{-2t}\right\} \\
&=& \frac{d^2 C(t)}{d^2 t}e^{-2t}-4\frac{dC(t)}{dt}e^{-2t}+4C(t)e^{-2t}
\end{eqnarray}
これらを先程の微分方程式に代入すると
\begin{eqnarray}
\frac{d^{2} x}{dt^2}+4\frac{dx}{dt}+4x &=& \frac{d^{2} (C(t)e^{-2t})}{dt^2}+4\frac{d(C(t)e^{-2t})}{dt}+4(C(t)e^{-2t} \\
&=& \frac{d^2 C(t)}{d^2 t}e^{-2t}-4\frac{dC(t)}{dt}e^{-2t}+4C(t)e^{-2t}+4\left\{\frac{dC(t)}{dt}e^{-2t}-2C(t)e^{-2t}\right\}+4(C(t)e^{-2t}\\
&=& \frac{d^2 C(t)}{d^2 t}e^{-2t} = 0\\
\end{eqnarray}
となります.
したがって,変数C(t)が2階微分をされると0になる変数に設定されれば,一般解として扱うことができると言えます.
そこで,2階微分すると0になる変数として以下のような1次式を設定します.
$$ C(t) = At+B $$
ここで,AとBは任意の定数とします.
以上のことから,特性方程式の解が重解となる時の一般解は以下のようになります.
$$ x = (At+B)e^{-2t} $$
\(b^2-4ac<0\)の時
\(b^2-4ac<0\)となる時は特性方程式の解は複素数となります.
解が特性方程式の解が複素数となる微分方程式は例えば以下のようなものが考えられます.
$$ \frac{d^{2} x}{dt^2}+2\frac{dx}{dt}+6x= 0$$
このとき,特性方程式の解は\(\lambda = -1\pm j\sqrt{5}\)となります.ここで,\(j\)は素数(\(j^2=-1\))を表します.
このときの一般解は\(b^2-4ac>0\)になる時と同じで
$$ x = Ae^{(-1+ j\sqrt{5})t}+Be^{(-1- j\sqrt{5})t} $$
となります.ここで,A, Bは任意の定数とします.
任意定数を求める
一般解を求めることができたら,最後に任意定数の値を特定します.
演習問題などの時は初期値が記載されていないこともあるので,一般解を解としても良いことがありますが,初期条件が定められている場合はAやBなどの任意定数を求める必要があります.
この任意定数を求めるのは非常に簡単で,初期値を代入するだけで求めることができます.
例えば,重解の時の例で使用した以下の微分方程式の解を求めてみます.
$$ \frac{d^{2} x}{dt^2}+4\frac{dx}{dt}+4x= 0$$
この微分方程式の一般解は
$$ x = (At+B)e^{-2t} $$
でした.この式中のAとBを求めます.
ここで,初期値が以下のように与えられていたとします.
\begin{eqnarray}
x(0) &=& 1\\
\frac{dx(0)}{dt} &=& 0
\end{eqnarray}
これを一般解に代入すると以下のようになります.
$$ x(0) = B = 1 $$
\begin{eqnarray}
\frac{dx}{dt} &=& Ae^{-2t}-2(At+B)e^{-2t} \\
\frac{dx(0)}{dt} &=& A-2B = 0 \\
\end{eqnarray}
$$ A = 2 $$
以上より,微分方程式の解は
$$ x = (2t+1)e^{-2t} $$
となります.
特性方程式の解が重解でなくても,同じように初期値を代入することで微分方程式の解を求めることができます.
まとめ
この記事では同次微分方程式の解き方を解説しました.
私は大学に入って最初にならった物理が,この微分方程式でした.
制御工学をまだ勉強していない方でも運動方程式は微分方程式で書かれるため,今回解説した同次微分方程式の解法は必ず理解しておく必要があります.
そんな方にこの記事が少しでもお役に立てることを願っています.
続けて読む
ここでは同次微分方程式と呼ばれる,右辺が0の微分方程式を解きました.
微分方程式には右辺が0ではない非同次微分方程式と呼ばれるものがあります.
以下の記事では,非同次微分方程式の解法について解説しているので参考にしてみてください.
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それでは最後まで読んでいただきありがとうございました.
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