大学院生が極と零点の関係について解説します.

制御工学

みなさん,こんにちは
おかしょです.

制御工学において特性方程式の解である極の位置は重要な意味を持ちます.

極の他にも重要なものがあります.
それが零点です.

この零点は制御工学において重要な意味を持つのですが,大学の授業や制御工学の基礎を解説した参考書では詳しい解説がされていません.

この記事を読むと以下のようなことがわかる・できるようになります.

  • 零点とは何か
  • 極と零点の関係
  • 極や零点がシステムの応答に与える影響

 

この記事を読む前に

この記事では,極と零点の関係について解説しています.

極については以下の記事で詳細に説明しているので,極についてのみ知りたい方は参考にしてください.

 

極と零点の求め方

極というのは伝達関数の分母の多項式を解いた結果を言います.
反対に零点は伝達関数の分子の多項式を解いた結果のことです.

つまり,極は伝達関数を無限大に発散させるもので,零点は伝達関数の大きさを0にするもののことを言います.

例えば,以下のような伝達関数があったとします.

$$ G(s) = \frac{s+1}{s+2} $$

この時の極は\(s=-2\),零点は\(s=-1\)となります.

零点も極と同じように複素平面の左半面にあることが好まれます.
このことについても以下では解説していきます.

 

極と零点の位置関係

ここからは極と零点の位置関係によって応答がどのように変化するのかを見ていきます.

以下のような条件の時の応答について考察していきます.

  1. どちらも左半面にあって極が零点よりも原点から遠い
  2. どちらも左半面にあって極と零点が同じ位置にある
  3. どちらも左半面にあって零点が極よりも原点から遠い
  4. 極は左半面にあるが,零点が右半面にある場合

 

どちらも左半面にあって極が零点よりも原点から遠い場合

このようなシステムの伝達関数は以下のようなものが考えられます.

$$ G(s) = \frac{s+1}{s+2} $$

この時の極は\(s=-2\),零点は\(s=-1\)となります.

このシステムに単位ステップ入力を加えた時の応答を考えます.

上記の伝達関数に単位ステップ入力を加えると,応答は以下のように表せます.

$$ Y(s) = \frac{s+1}{s(s+2)} $$

これを逆ラプラス変換して時間領域に変換するために,まずは部分分数分解をします.

\begin{eqnarray}
\frac{s+1}{s(s+2)} &=& \frac{A}{s}+\frac{B}{s+2} \\
s+1 &=& A(s+2)+Bs\\
&=& (A+B)s+2A
\end{eqnarray}

両辺を係数比較してAとBの値を求めると,\(A=\frac{1}{2},\ B = \frac{1}{2}\)となります.

したがって,システムの単位スッテプ応答は以下のようになります.

$$ Y(s) = \frac{1}{2s}+\frac{1}{2(s+2)} $$

これを逆ラプラス変換すると,時間領域の応答は

$$ y(t) = \frac{1}{2}+\frac{1}{2} e^{-2t} $$

となります.

このとき,右辺第1項のことを強制応答,第2項のことを過渡応答と言います.

強制応答は時間によらず一定値となり,過渡応答は十分な時間が経過すると0となる応答のことを言います.

このとき,過渡応答の指数の肩の値は極の位置によって決められます.
極の位置がこの例のように複素平面内の左半面にあれば収束しますが,右半面にある場合は指数の肩が正の値となって応答は発散してしまいます.

強制応答は極の位置と零点の位置の比によって決まります.

以上のような応答をグラフで表すと以下のようになります.

 

どちらも左半面にあって極と零点が同じ位置にある場合

次は以下のようなシステムを考えます.

$$ G(s) = \frac{s+1}{s+1} $$

この時の極と零点はどちらも\(s=-1\)となります.

このようなシステムに単位ステップ入力を加えると,応答は以下のように表せます.

$$ Y(s) = \frac{s+1}{s(s+1)} $$

先程と同様にまずは部分分数分解をします.

\begin{eqnarray}
\frac{s+1}{s(s+1)} &=& \frac{A}{s}+\frac{B}{s+1} \\
s+1 &=& A(s+1)+Bs\\
&=& (A+B)s+A
\end{eqnarray}

両辺を係数比較してAとBの値を求めると,\(A=1,\ B = 0\)となります.

したがって,システムの単位スッテプ応答は以下のようになります.

$$ Y(s) = \frac{1}{s} $$

これを逆ラプラス変換すると,時間領域の応答は

$$ y(t) = 1 $$

となります.

これはステップ入力をそのまま出力していることになります.

それは当たり前のことで,最初に示した伝達関数は分母と分子が同じなので消去することができます.
このように極と零点の位置が同じで消去できることを極零相殺と言います.

 

どちらも左半面にあって零点が極よりも原点から遠い場合

この場合は以下のようなシステムになります.

$$ G(s) = \frac{s+2}{s+1} $$

この時の極は\(s=-1\),零点は\(s=-2\)となります.

このようなシステムに単位ステップ入力を加えると,応答は以下のようになります.

$$ Y(s) = \frac{s+2}{s(s+1)} $$

これまでと同様にまずは部分分数分解をします.

\begin{eqnarray}
\frac{s+2}{s(s+1)} &=& \frac{A}{s}+\frac{B}{s+1} \\
s+2 &=& A(s+1)+Bs\\
&=& (A+B)s+A
\end{eqnarray}

両辺を係数比較してAとBの値を求めると,\(A=2,\ B = -1\)となります.

したがって,システムの単位スッテプ応答は以下のようになります.

$$ Y(s) = \frac{2}{s} -\frac{1}{s+1} $$

これを逆ラプラス変換すると,時間領域の応答は

$$ y(t) = 2-e^{-t} $$

となります.

先程述べたように,強制応答は極と零点の比によって求められます.
今回の場合は零点の方が極よりも大きいので,強制応答も大きくなりました.

これをグラフにすると以下のようになります.

 

極は左半面にあるが,零点が右半面にある場合

最後に,零点が右半面にある場合を考えてみます.
伝達関数が以下のようになるシステムを考えます.

$$ G(s) = \frac{s-1}{s+1} $$

この時の極は\(s=-1\),零点は\(s=+1\)となります.

このようなシステムに単位ステップ入力を加えると,応答は以下のようになります.

$$ Y(s) = \frac{s-1}{s(s+1)} $$

まずは部分分数分解をします.

\begin{eqnarray}
\frac{s-1}{s(s+1)} &=& \frac{A}{s}+\frac{B}{s+1} \\
s-1 &=& A(s+1)+Bs\\
&=& (A+B)s+A
\end{eqnarray}

両辺を係数比較してAとBの値を求めると,\(A=-1,\ B = 2\)となります.

したがって,システムの単位スッテプ応答は以下のようになります.

$$ Y(s) = -\frac{1}{s} +\frac{2}{s+1} $$

これを逆ラプラス変換すると,時間領域の応答は

$$ y(t) = -1+2e^{-t} $$

となります.

これをグラフにすると以下のようになります.

入力値は単位ステップ入力なので+1を与えています.

しかし,応答は-1に収束しています.
このように零点が右半面にある場合は応答が逆になります.

このような現象を逆ぶれと言います.

 

まとめ

この記事では極と零点の関係について解説しました.

上記の結果から,強制応答は極と零点の比によって決まり,過渡応答は極によって収束するか否かが決まることがわかりました.

また,極の位置よりも零点の位置を原点から離せば離すほど応答は大きくなります.
反対に零点の位置よりも極の位置を原点から離せば離すほど応答は小さくなります.

 

続けて読む

極と零点について理解できたら,以下の記事で解説しているPID制御器を学習することをおすすめします.

PID制御について知っている方も,零点について理解してから読むとゲインの決定の仕方がさらに理解できるようになると思います.

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それでは最後まで読んでいただきありがとうございました.

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