みなさん,こんにちは
おかしょです.
この記事では最終値の定理について解説します.
古典制御工学を学ぶと必ず目にするこの定理なのですが,導出方法などを解説した参考書は少ないのでその導出方法も解説します.
この記事を読むと以下のようなことがわかる・できるようになります.
- 最終値の定理とは
- 最終値の定理の導出方法
この記事を読む前に
この記事では解説の時にラプラス変換を利用します.
古典制御工学ではラプラス変換を必ず利用するので,ラプラス変換について知っておく必要があります.
以下の記事ではそのラプラス変換について解説しているので,先に読んでおくことをおすすめします.
最終値の定理とは
最終値の定理とは,システムの収束する値を計算をして求めることのできる定理のことを言います.
この定理は数式で以下のように表されます.
$$ f(\infty) = \displaystyle \lim_{ s \to 0} sF(s) $$
この数式で\(F(s)\)というのは\(f(t)\)のラプラス変換した結果だとします.
制御工学においては,\(F(s)\)はシステムの伝達関数に入力を掛けたものを代入して,収束する値を求めたりすることが多いです.
これは大学の授業でも出題される定理で,さまざまなシステムの収束する値を求めるためにこの定理を使用します.
しかし,この定理がどのようにして導出されるのかは説明されないことが多いです.
数式をもう一度見ると,最終値を求めるのになぜsが0になることを考えるのかがわかりません.
そのあたりも含めて以下では最終値の定理の導出方法を解説します.
最終値の定理の導出
最終値の定理ではシステムの収束する値を求めることができます.
先程示した数式では,システムの伝達関数が必要でした.
伝達関数は運動方程式をラプラス変換することによって求めることができます.
ここで,システムの運動方程式が以下のように表されていたとします.
$$ x(t) = f(t) $$
このとき,システムが収束する値は時間が十分に経過した(\(t \to \infty\))後の値\(f(\infty)\)となります.
この値(\(f(\infty)\))を求める方法を考えていきます.
この値を求める方法として,以下のように積分するということが考えられます.
$$ \displaystyle \int_{0}^{ \infty } \dot{f}(t) dt = f(\infty)- f(0) $$
上式で\(f(0)\)というのはシステムの初期値を表します.
ここで,ラプラス変換するときも以上のような積分を行います.
ラプラス変換の公式は
$$ \mathcal{L} \left[f(t)\right] = \displaystyle \int_{0}^{ \infty } f(t) e^{-st} dt $$
でした.
先程の式と見比べると,積分範囲が同じなので非常に似ています.
2つの式を同じ形にするには\(e^{-st}\)を掛ければ良さそうなのですが,そのようにすると式の意味が変わってしまうので,\(e^{-st}\)を掛けても式の意味が変わらないようにする必要があります.
そこで,\(s \to 0\)に極限をとります.
このようにすると\(e^{-st}\)が1になるので,式の意味が変わりません.
以上のことを整理すると以下のようになります.
$$ \displaystyle \lim_{ s \to 0} \displaystyle \int_{0}^{ \infty } \dot{f}(t) e^{-st} dt = f(\infty)- f(0) $$
この式の積分の部分はラプラス変換と同じ式なので,ラプラス変換をすると
\begin{eqnarray}
\displaystyle \lim_{ s \to 0} \{sF(s)-f(0)\} &=& f(\infty)- f(0) \\
\displaystyle \lim_{ s \to 0} sF(s) &=& f(\infty)
\end{eqnarray}
となり,最終値の定理となります.
まとめ
この記事では最終値の定理の導出方法について解説しました.
最終値の定理は便利でよく利用されるのですが,導出方法について触れられることは少ないです.
導出方法を知っているから役に立つということはないと思いますが,知っておいて損はないと思います.
続けて読む
今回解説した最終値の定理を用いれば,システムに定常偏差が生じるのかなどのチェックができます.
以下の記事ではP制御が定常偏差を生じるのかを最終値の定理で確認しています.
興味のある方は参考にしてください.
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それでは最後まで読んでいただきありがとうございました.
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