ラプラス変換の計算方法

制御工学

みなさん,こんにちは
おかしょです.

古典制御工学では,伝達関数は”s”を使った周波数領域で表されます.
しかし,高校生の時にならった運動方程式は時間領域で表されていました.

そのため,古典制御工学を学ぶには運動方程式を周波数領域に変換する必要があります.

この変換を行う方法がラプラス変換というものです.

この記事を読むと以下のようなことがわかる・できるようになります.

  • ラプラス変換の公式
  • さまざまな関数をラプラス変換する計算方法

 

この記事を読む前に

この記事ではラプラス変換を行う方法について解説をしていきます.

ラプラス変換をする目的は,古典制御工学で扱うような周波数領域にシステムを変換するためです.

しかし,システムの表現として運動方程式を求めることも自信がない方は以下の記事で運動方程式の求め方を解説しているので,そちらを参照してください.

 

ラプラス変換の公式

システムを周波数領域に変換する方法はラプラス変換だと言いましたが,これは間違いです.

周波数領域に変換するのはフーリエ変換です.

しかし,フーリエ変換の場合はフーリエ変換を行える条件が非常に厳しくなっています.

そこで,その条件を緩和したものがラプラス変換です.

条件を緩和したからと言って,もともとのシステムの性質が損なわれることはないので,ラプラス変換でも問題はありません.

システム\(f(t)\)をラプラス変換する公式は以下のようになっています.

$$ F(s) = \displaystyle \int_{0}^{ \infty } f(t) e^{-st} dt $$

ちなみに,フーリエ変換の公式は以下になります.

$$ F(j \omega) = \displaystyle \int_{-\infty}^{ \infty } f(t) e^{-j \omega t} dt $$

2式を比べると,積分範囲の低い方が\(-\infty\)から0になっています.

通常は時間がさかのぼることは考えないので,積分範囲は0秒からで問題ありません.

なので,t<0の時のf(t)の値が0であると置けば,ラプラス変換とフーリエ変換は\(s=j\omega\)とすることで同義ということになります.

 

いろいろな関数をラプラス変換してみる

上に書いたラプラス変換の公式を用いてさまざまな関数をラプラス変換してみます.

 

単位ステップ関数

単位ステップ関数というのは,制御性能を調べるときによく用いられる関数で
どの時間においても一定値で1になる関数のことを言います.

$$ f(t) = 1 $$

これをラプラス変換すると以下のようになります.

\begin{eqnarray}
F(s) &=& \displaystyle \int_{0}^{ \infty } f(t) e^{-st} dt\\
&=& \displaystyle \int_{0}^{ \infty } 1\cdot e^{-st} dt\\
&=& \displaystyle \int_{0}^{ \infty } e^{-st} dt\\
&=& \left[-\frac{1}{s} e^{-st}\right]_{0}^{ \infty }\\
&=& -\frac{1}{s} (0-1)\\
&=& \frac{1}{s}
\end{eqnarray}

 

ランプ関数

ランプ関数というのは時間に比例していく関数のことを言います.

$$ f(t) = t $$

これをラプラス変換すると以下のようになります.

\begin{eqnarray}
F(s) &=& \displaystyle \int_{0}^{ \infty } f(t) e^{-st} dt\\
&=& \displaystyle \int_{0}^{ \infty } t\cdot e^{-st} dt\\
&=& \left[t\left(-\frac{1}{s} e^{-st}\right)\right]_{0}^{ \infty }-\displaystyle \int_{0}^{ \infty } -\frac{1}{s} e^{-st} dt \\
&=& 0+\frac{1}{s} \left[-\frac{1}{s} e^{-st}\right]_{0}^{ \infty }\\
&=& -\frac{1}{s^2} (0-1)\\
&=& \frac{1}{s^2}
\end{eqnarray}

 

指数関数

次は,以下のような指数関数をラプラス変換します.

$$ f(t) = e^{-at} $$

これをラプラス変換すると以下のようになります.

\begin{eqnarray}
F(s) &=& \displaystyle \int_{0}^{ \infty } f(t) e^{-st} dt\\
&=& \displaystyle \int_{0}^{ \infty } e^{-at}\cdot e^{-st} dt\\
&=& \displaystyle \int_{0}^{ \infty } e^{-(s+a)t} dt\\
&=& \left[-\frac{1}{s+a} e^{-(s+a)t}\right]_{0}^{ \infty }\\
&=& -\frac{1}{s+a} (0-1)\\
&=& \frac{1}{s+a}
\end{eqnarray}

 

正弦関数

次は正弦波をラプラス変換します.

$$ f(t) = \sin \omega t $$

これをラプラス変換すると以下のようになります.

\begin{eqnarray}
F(s) &=& \displaystyle \int_{0}^{ \infty } f(t) e^{-st} dt\\
&=& \displaystyle \int_{0}^{ \infty } \sin \omega t \cdot e^{-st} dt\\
&=& \left[\sin \omega t\left(-\frac{1}{s} e^{-st}\right)\right]_{0}^{ \infty }-\displaystyle \int_{0}^{ \infty } \omega \cos \omega t \left(-\frac{1}{s} e^{-st}\right) dt\\
&=& -\frac{1}{s} (0-0) +\frac{\omega}{s} \displaystyle \int_{0}^{ \infty } \cos \omega t \cdot e^{-st} dt\\
&=& \frac{\omega}{s} \left( \left[\cos\omega t\left(-\frac{1}{s} e^{-st}\right)\right]_{0}^{ \infty }-\displaystyle \int_{0}^{ \infty } (-\omega \sin \omega t) \left(-\frac{1}{s} e^{-st}\right) dt \right)\\
&=& \frac{\omega}{s} \left(-\frac{1}{s} (0-1)-\frac{\omega}{s} \displaystyle \int_{0}^{ \infty } \sin \omega t \cdot e^{-st} dt \right)\\
&=& \frac{\omega}{s} \left(\frac{1}{s}-\frac{\omega}{s} \displaystyle \int_{0}^{ \infty } \sin \omega t \cdot e^{-st} dt \right)\\
\end{eqnarray}

ここで,

$$ I = \displaystyle \int_{0}^{ \infty } \sin \omega t \cdot e^{-st} dt = F(s) $$

と置くと,上式は以下のようになります.

\begin{eqnarray}
I &=& \frac{\omega}{s} \left(\frac{1}{s}-\frac{\omega}{s} I \right)\\
&=& \frac{\omega}{s^2} -\frac{\omega^2}{s^2} I \\
\left(1+\frac{\omega^2}{s^2}\right) I &=& \frac{\omega}{s^2}\\
\frac{s^2+\omega^2}{s^2} I &=& \frac{\omega}{s^2}\\
I &=& \frac{\omega}{s^2+\omega^2}
\end{eqnarray}

よって,正弦波をラプラス変換した結果は以下のようになります.

$$ F(s) = \frac{\omega}{s^2+\omega^2} $$

 

余弦関数

正弦関数の次は余弦関数のラプラス変換を行います.

$$ f(t) = \cos \omega t $$

これをラプラス変換すると以下のようになります.
手順としては正弦波の時と同じになります.

\begin{eqnarray}
F(s) &=& \displaystyle \int_{0}^{ \infty } f(t) e^{-st} dt\\
&=& \displaystyle \int_{0}^{ \infty } \cos \omega t \cdot e^{-st} dt\\
&=& \left[\cos \omega t\left(-\frac{1}{s} e^{-st}\right)\right]_{0}^{ \infty }-\displaystyle \int_{0}^{ \infty } (-\omega \sin \omega t) \left(-\frac{1}{s} e^{-st}\right) dt\\
&=& -\frac{1}{s} (0-1) -\frac{\omega}{s} \displaystyle \int_{0}^{ \infty } \sin \omega t \cdot e^{-st} dt\\
&=& \frac{1}{s} – \frac{\omega}{s} \left( \left[\sin \omega t\left(-\frac{1}{s} e^{-st}\right)\right]_{0}^{ \infty }-\displaystyle \int_{0}^{ \infty } \omega \cos \omega t \left(-\frac{1}{s} e^{-st}\right) dt \right)\\
&=& \frac{1}{s} -\frac{\omega}{s} \left(-\frac{1}{s} (0-0)+\frac{\omega}{s} \displaystyle \int_{0}^{ \infty } \cos \omega t \cdot e^{-st} dt \right)\\
&=& \frac{1}{s} -\frac{\omega^2}{s^2} \displaystyle \int_{0}^{ \infty } \cos \omega t \cdot e^{-st} dt \\
\end{eqnarray}

ここで,

$$ I = \displaystyle \int_{0}^{ \infty } \cos \omega t \cdot e^{-st} dt = F(s) $$

と置くと,上式は以下のようになります.

\begin{eqnarray}
I &=& \frac{1}{s} -\frac{\omega^2}{s^2} I \\
\left(1+\frac{\omega^2}{s^2}\right) I &=& \frac{1}{s}\\
\frac{s^2+\omega^2}{s^2} I &=& \frac{1}{s}\\
I &=& \frac{s}{s^2+\omega^2}
\end{eqnarray}

よって,余弦関数をラプラス変換した結果は以下のようになります.

$$ F(s) = \frac{s}{s^2+\omega^2} $$

 

まとめ

この記事では様々な関数をラプラス変換する方法を解説しました.

ラプラス変換ができるようになれば,古典制御の教科書に載っていないようなシステムも周波数領域に変換ができるので,自分が作ったロボットの運動方程式をラプラス変換して解析することもできるようになります.

 

続けて読む

ラプラス変換をする方法が理解できたら,次は伝達関数の求め方を理解しましょう.

伝達関数については以下で求め方などの解説をしています.

ブロック線図について知りたい方は以下が参考になると思います.

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それでは,最後まで読んでいただきありがとうございました.

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