[数値シミュレーション]線形化した倒立振子をP制御してみる

制御工学

みなさん,こんにちは
おかしょです.

この記事では,線形化した二輪型倒立振子をP制御で安定化させる数値シミュレーションを解説します.

この記事を読むと以下のようなことがわかる・できるようになります.

  • P制御とは
  • 倒立振子とは
  • 二輪型倒立振子の制御方法
  • 数値シミュレーションのやり方

 

この記事を読む前に

この記事では,以下の記事で解説している二輪型倒立振子を線形化したモデルで数値シミュレーションを行っています.以下の記事をまだ読んでいない方は,以下の記事を先に読んでおくことをおすすめします.

二輪型倒立振子とは

まず,二輪型倒立振子とはどのようなものなのかを説明します.
そもそも倒立振子というものをご存知でしょうか.

倒立振子は「とうりつふりこ」もしくは「とうりつしんし」と読みます.

普通の振子は糸の先端に鉄球がついていて垂れ下がった状態を中心として左右に行ったり来たりしますが,倒立振子は垂れ下がった状態が中心ではなく,回転中心の上を中心とした振子のことです.

イメージとしては手のひらでバランスをとったほうきのようなものです.二輪型倒立振子は手のひらの代わりに車輪を付けたものだと考えて問題ありません.

二輪型倒立振子についてもっと詳しく知りたい方は,こちらの記事を参照してください.

P制御とは

次にP制御とはどのような制御器なのかを説明します.

P制御というのは目標値と現在の状態の差を取り,一定値を掛けたものを制御入力とする制御則です.

この制御器は目標値との定常偏差が生じてしまう欠点があります.こちらについても,詳しいことはこちらの記事を参照してください.

数値シミュレーション結果

結果から言うと,P制御では制御できません.

その理由を数値シミュレーション結果を見ながら,確認していきたいと思います.

P制御のブロック線図は以下のようになっており,目標値を0として振子の角度\(\theta\)を制御します.

ここで,P制御のゲイン\(K_P\)を-300として数値シミュレーションを行うと以下のようになります.

振子の角度の初期値を-0.1radとして数値シミュレーションを行いました.

その結果,P制御によって一瞬で倒立状態に戻っていることがわかります.しかし,時間が経過すると少しづつ振子が傾いています

なぜこのような状態になってしまうのでしょうか.そこで,タイヤの回転角度の時間履歴を見てみます.

タイヤの回転角が時間の経過とともに減少しています.つまり,タイヤが常に回転しているので二輪型倒立振子はある向きに向かってずっと動いているということになります.

それもそのはずです.運動方程式を立てる際に,座標軸は以下の図で表すように設定していました.

初期状態では振子が左に傾いていました.この倒立振子をほうきとして手のひらの上に乗っかっていたとします.このような場合,手を左に動かしてバランスをとると思います.それと同じことをタイヤで行うために,車輪を負の向きに回転させて二輪型倒立振子を左に移動させていることを数値シミュレーションの結果は示しています.

数値シミュレーションの結果は,倒立振子を倒立させるために正しい動作をしていることを示していることがわかりました.

それでは,なぜP制御では倒立状態を維持できないのでしょうか.

この理由はP制御では定常偏差が残ってしまう事と関係があります.
詳しいことはこちらの記事で解説しているのですが,P制御では求められた制御入力と釣り合う状態に収束します.その釣り合う状態が目標の状態とは異なってしまうために定常偏差が生じてしまいます.

今回のような二輪型倒立振子の場合は,制御入力と釣り合う状態というのが垂れ下がった状態に近くなってしまうため,このような数値シミュレーションの結果となってしまいました.

また,今回のシミュレーションの制御入力を見てみましょう.

一瞬ですが,非常に大きな制御入力となっています.

ゲイン\(K_P\)を大きくすればするほど倒立状態を維持する時間は長くなりますが,その分,制御入力も大きくなってしまいます.

実際のシステムでは,制御入力には限界があるのでこのようなことはできません.

まとめ

この記事では,二輪型倒立振子をP制御で数値シミュレーションを行った結果を報告しました.また,P制御では制御ができないことも解説しました.

以上でも述べたようにP制御では二輪型倒立振子を倒立状態で維持することはできないので,定常偏差を生じない積分器が必要になってきます.

続けて読む

この記事で解説したP制御では定常偏差が残ってしまいました.

以下の記事では積分器を追加したPI制御器で二輪型倒立振子を制御しています.ぜひ続けて読んでください.

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それでは最後まで読んでいただきありがとうございました.

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