P制御だと定常偏差が残ってしまう理由を「最終値の定理」を使わずに解説

制御工学

みなさん,こんにちは
おかしょです.

P制御は定常偏差が残ってしまうことを最終値の定理を使ってよく解説されています.

しかし先日,研究室の後輩に「最終値の定理から定常偏差が残ることはわかったけど,偏差を0にするように制御しているのに定常偏差がどうして残るのかがわからない」と質問をされました.

そこで,この記事ではなぜP制御だと定常偏差が残るのかを詳しく解説していきたいと思います.

この記事を読むと以下のようなことがわかる・できるようになります.

  • 定常偏差が残る理由
  • 定常偏差をなくす方法

 

この記事を読む前に

そもそもP制御とは何かよくわからない方は,以下の記事で解説しているので参考にしてください.

 

定常偏差が残る理由を最終値の定理で確認

まずは,最終値の定理を使って定常偏差がどうして残るのかを確認します.

最終値の定理での証明はわかる方は,ここは読み飛ばしてしまって構いません.

さて,説明をするために制御対象のシステムは以下のような伝達関数で表すことができるとします.

$$ G(s)=\frac{1}{s+1} $$

このシステムに対して,P制御を適用すると伝達関数は次のようになります.

$$ \frac{Y}{R}=\frac{K_P}{s+1+K_P} $$

これに対して,目標値を1(単位ステップ)として最終値の定理を使うと以下のようになります.

\begin{eqnarray}
y(\infty)&=&\displaystyle \lim_{s \to 0} s\cdot F(s)\\
&=&\displaystyle \lim_{s \to 0} s\cdot \frac{K_P}{s+1+K_P}\cdot \frac{1}{s}\\
&=& \frac{K_P}{1+K_P}
\end{eqnarray}

例えば,\(K_P=1\)として上式を計算すると\(y(\infty)=1/2\)となってしまい,定常偏差\(1/2\)が生じてしまいます.

このように,P制御では必ず定常偏差が生じてしまいます

\(K_P\)の値を無限大にすれば,定常偏差をなくすことはできますが,実際は\(K_P\)を無限大にすることはできないので定常偏差をなくすことは事実上不可能です.

さて,最終値の定理を使えば定常偏差が残ってしまう事はわかったのですが
目標値と出力の差をとって入力を決定しているにもかかわらず,どうして定常偏差が残ってしまうのでしょうか.

 

定常偏差が残る本当の理由

ここからは定常偏差が残る理由を具体例を使って解説していきます.

例えば,以下のようなワンリンクアームの振子があったとします.

このロボットは振子との関節の部分にモーターが取り付けられていて,このモーターを駆動することによって振子の角度を制御することができます.

このアームの角度を90°にP制御で制御をすることを考えます.

この目標角度を維持するために必要なモーターのトルク\(T\)は上式より\(Lmg\)であることがわかります.
つまり,P制御の制御入力が最終的に\(Lmg\)であれば良いということです.
ここでは,必要なトルクを\(T=100\)とします.

さて,ワンリンクアームの角度は最初は0°であるので,初期状態での偏差は90°ということになります.通常は角度の単位はラジアンを使うのですが,イメージしやすいようにディグリーのまま計算していきます.

P制御のゲイン\(K_P\)は1として,制御入力を計算すると\(T=90\)となります.

その結果,アームの角度が80°となったとします.

この場合,偏差は10なので制御入力は\(T=10\)となります.

先程よりも,トルクが減ってしまいました.その結果,アームの角度は下がってしまいます.

このように,目標値へと到達する前に偏差が小さくなったことによって制御入力の大きさも減り,P制御では目標値へ到達するのに必要なトルクを得ることができません.

それでは,P制御ではなぜ一定の偏差のところに収束してしまうのでしょうか.

先程の例のように常に偏差は生じるため,モーターによるトルクも常に発生することになります.
しかし,ある一定の角度で停止することになります.

それがどのような角度なのかをこれから説明していきます.

この疑問の回答は,以下の図を見ていただければわかるかと思います.

落ち着くアームの角度を\(\theta\)とすると,この角度を維持するのに必要なトルクは\(Lmg\sin \theta\)となります.

この必要なトルクとP制御による制御入力が釣り合うときの角度が定常偏差となって現れます.

つまり,P制御で定常偏差が生じてしまうのは目標値とは別の状態で制御入力が釣り合ってしまうからです.

 

定常偏差をなくすにはどうすれば良いか

それでは,定常偏差をなくすにはどうすれば良いのでしょうか.

先程も述べたように,定常偏差がなくなるのは制御入力が不足してしまうためです.
なので,定常偏差をなくすには足りない制御入力を補充してあげればOKです.

そのようなことをしてくれる制御器が「積分器」です.

積分器とはI制御のことで,偏差を積分して制御入力を求めます.
これによって,時間の経過とともに偏差が積分されていくので偏差が大きい状態が続けば,制御入力が大きくなっていきます.

その結果,足りなかった制御入力が補充されていき,偏差が0になれば積分されても制御入力が増えることがないので目標値へと到達することができます.

 

まとめ

この記事では,P制御ではなぜ定常偏差が生じるのかを最終値の定理を使わないで解説しました.

まとめると,P制御では目標とは別の状態で制御入力が釣り合ってしまうから定常偏差が残ってしまうということでした.

自分なりにわかりやすく解説してみたのですが,困っている方々の手助けとなっていれば幸いです.

 

続けて読む

定常偏差をなくすには積分器が必要で,以下の記事ではP制御に積分器を加えたPI制御について解説しています.興味のある方は続けて参考にしてください.

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それでは最後まで読んでいただきありがとうございました.

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