みなさん,こんにちは
おかしょです.
制御工学の勉強をしたり自分でロボットを作ったりすると,必ず運動方程式を求めることになると思います.
制御器を設計して数値シミュレーションをする場合はルンゲクッタなどの積分器で積分をすれば十分ですが,制御器を加えない自由応答を見たい場合は運動方程式である微分方程式を解いた方が正確な応答を見ることができます.
微分方程式で表される運動方程式は右辺が0ではない非同次微分方程式であることがほとんどです.
この記事はそんな非同次微分方程式の解き方について解説します.
この記事を読むと以下のようなことがわかる・できるようになります.
- 非同次微分方程式の解き方
- 特殊解の求め方
この記事を読む前に
この記事では非同次微分方程式の解き方を解説しています.
非同次微分方程式の解き方は途中まで同次微分方程式の解き方と一緒なので,同次微分方程式の解き方がわからない方は以下の記事を先に読んでおくことをおすすめします.
非同次微分方程式を解く手順
非同次微分方程式というのは,以下のような微分方程式のことを言います.
$$ a \frac{d^{2} x}{dt^2}+b\frac{dx}{dt}+cx= f(t)$$
このような非同次微分方程式を解くための一連の流れは以下のようになります.
- 同次微分方程式の一般解を求める
- 特殊解を求める
- 非同次微分方程式の一般解を求める
- 初期値を代入して任意定数を求める
非同次微分方程式を解くときは,最初に以下のような右辺を0とした同時微分方程式の一般解を求めることから始めます.
$$ a \frac{d^{2} x}{dt^2}+b\frac{dx}{dt}+cx= 0$$
この同時微分方程式の解き方はこちらで解説しているので,そちらを参照してください.
非同次微分方程式の解き方
先程も述べたように手順1の同時微分方程式の解き方は前回の記事に書いてあるので,この記事では手順2の特殊解の求め方から解説していきます.
特殊解を求める
特殊解というのは,非同次微分方程式を満足するような解のことを言います.
この特殊解は同時微分方程式の一般解のように手順にしたがって求めるのではなく,右辺の式によってある程度決まります.
以下では右辺がさまざまな形のことを考えて解説していきます.
また,非同次微分方程式は以下を使用して解説します.
$$ \frac{d^{2} x}{dt^2}+4\frac{dx}{dt}+4x= f(t) $$
f(t)が定数の時
非同次微分方程式が運動方程式を表す場合,右辺の値は重力を表すことがあります.
重力は地球上であれば,一定値として扱われることがほとんどです.
このようなときの特殊解Xを求めてみます.
ここでは非同次微分方程式として以下のものを考えます.
$$ \frac{d^{2} x}{dt^2}+4\frac{dx}{dt}+4x= 6 $$
非同次項f(t)が定数の時は特殊解Xも定数としておきます.
ここでは特殊解XをFとします.
この特殊解Xを上の微分方程式に代入します.特殊解Xは定数Fなので微分すると0になることに注意してください.
\begin{eqnarray}
4F &=& 6\\
F &=& \frac{3}{2}
\end{eqnarray}
従って,特殊解は\(X=\frac{3}{2}\)となります.
f(t)が多項式の場合
非同次項f(t)が多項式の場合も特殊解Xは非同次項と同じような形で仮定すればOKです.
例えば,非同次項f(t)が以下のような多項式であった場合
$$ f(t) = 2t+3 $$
特殊解Xは以下のようにおきます.
$$ X = Ft+G $$
これも先程と同様に微分方程式に代入します.
\begin{eqnarray}
\frac{d^{2} x}{dt^2}+4\frac{dx}{dt}+4x&=& 2t+3\\
4F+4(Ft+G) &=& 2t+3\\
4Ft+(4F+4G) &=& 2t+3
\end{eqnarray}
両辺を係数比較すると特殊解Xは以下のように求まります.
$$ X=\frac{1}{2}t+\frac{1}{4} $$
f(t)が三角関数の場合
非同次項が三角関数の場合は特殊解Xも三角関数と仮定します.
例えば,以下のような微分方程式が与えられていたとします.
$$ \frac{d^{2} x}{dt^2}+4\frac{dx}{dt}+4x= 2\sin 3t $$
このようなときは特殊解Xを以下のように置きます.
$$ X = F\sin 3t +G\cos 3t $$
こちらも微分方程式に代入します.
代入する前に,この特殊解の1階微分と2階微分を求めておきます.
$$ \frac{dX}{dt} = 3F\cos 3t -3G\sin 3t $$
$$ \frac{d^2 X}{dt^2} = -9F\sin 3t -9G\cos 3t $$
これらを微分方程式に代入します.
\begin{eqnarray}
\frac{d^{2} x}{dt^2}+4\frac{dx}{dt}+4x&=& 2\sin 3t\\
-9F\sin 3t -9G\cos 3t+4(3F\cos 3t -3G\sin 3t)+4(F\sin 3t +G\cos 3t)&=& 2\sin 3t\\
(-5F-12G)\sin 3t +(12F-5G)\cos 3t &=& 2\sin 3t
\end{eqnarray}
両辺を係数比較して,連立方程式を解きます.
すると,特殊解Xは以下のようになります.
$$ X = -\frac{10}{169} \sin 3t +-\frac{24}{169}\cos 3t $$
てきとうに問題を作ってしまったため,スッキリしない数字となってしまいました.
f(t)が指数関数の場合
指数関数の場合は特殊解Xも指数関数だと仮定します.
例えば,以下のような微分方程式があったとします.
$$ \frac{d^{2} x}{dt^2}+4\frac{dx}{dt}+4x= 3e^{-2t} $$
この時,特殊解Xを以下のように置きます.
$$ X = Fe^{-2t} $$
これも微分方程式に代入してみます.
\begin{eqnarray}
\frac{d^{2} x}{dt^2}+4\frac{dx}{dt}+4x&=& 3e^{-2t}\\
4F e^{-2t}-8Fe^{-2t}+4Fe^{-2t} &=& 3e^{-2t}\\
0 &=& 2e^{-2t}\\
\end{eqnarray}
ここで,問題が発生しました.
左辺が0となってしまったので,特殊解を求めることが出来ません.
このように非同次項の指数の肩が特性方程式の解と一致する場合は,特殊解が上のような置き方では求めることができません.
そこで,特殊解を以下のように置きなおします.
$$ X = Fte^{-2t} $$
このようにして微分方程式に代入します.
代入する前に,特殊解の1階微分と2階微分を求めておきます.
$$ \frac{dX}{dt} = Fe^{-2t}-2Fte^{-2t} $$
\begin{eqnarray}
\frac{d^2X}{dt^2} &=& -2Fe^{-2t}-2Fe^{-2t}+4Fte^{-2t} \\
&=& -4Fe^{-2t}+4Fte^{-2t}
\end{eqnarray}
これらを微分方程式に代入します.
\begin{eqnarray}
\frac{d^{2} x}{dt^2}+4\frac{dx}{dt}+4x&=& 3e^{-2t}\\
-4Fe^{-2t}+4Fte^{-2t}+4(Fe^{-2t}-2Fte^{-2t})+4Fte^{-2t} &=& 3e^{-2t}\\
0 &=& 3e^{-2t}\\
\end{eqnarray}
またもや左辺が0となってしまいました.
次は特殊解を以下のように置いてみます.
$$ X = Ft^2 e^{-2t} $$
この特殊解の1階微分と2階微分を求めておきます.
$$ \frac{dX}{dt} = 2Fte^{-2t}-2Ft^2 e^{-2t} $$
\begin{eqnarray}
\frac{d^2X}{dt^2} &=& 2Fe^{-2t}-4Fte^{-2t}-4Fte^{-2t}+4Ft^2 e^{-2t} \\
&=& 2Fe^{-2t}-8Fte^{-2t}+4Ft^2 e^{-2t} \\
\end{eqnarray}
これらを微分方程式に代入します.
\begin{eqnarray}
\frac{d^{2} x}{dt^2}+4\frac{dx}{dt}+4x&=& 3e^{-2t}\\
2Fe^{-2t}-8Fte^{-2t}+4Ft^2 e^{-2t}+4(2Fte^{-2t}-2Ft^2 e^{-2t})+4Ft^2 e^{-2t} &=& 3e^{-2t}\\
2Fe^{-2t} &=& 3e^{-2t}\\
\end{eqnarray}
以上より,特殊解は以下のようになります.
$$ X = \frac{3}{2} t^2 e^{-2t} $$
このように,特殊解の候補を微分方程式に代入して求めることができなくなったら,別の特殊解の候補を代入してみて求めます.
今回のように指数の肩が特性方程式の解と一致している場合は上記のように特殊解を置く必要がありますが,特性方程式と一致しない場合は特殊解は\(X=Fe^{-2t}\)の形で求めることができます.
非同次微分方程式の一般解を求める
特殊解を求めることができたら,一般解を求めます.
一般解は非常に簡単で,同時微分方程式の一般解と特殊解を足し合わせるだけで求められます.
例えば
$$ \frac{d^{2} x}{dt^2}+4\frac{dx}{dt}+4x= 3e^{-2t} $$
このような非同次微分方程式があったとします.
このときの同時微分方程式の一般解は以下のようになります.
$$ x = (At+B)e^{-2t} $$
そして,特殊解は以下です.
$$ X = \frac{3}{2} t^2 e^{-2t} $$
従って,非同次微分方程式の一般解はこれらを足し合わせた
$$ x = (At+B)e^{-2t}+ \frac{3}{2} t^2 e^{-2t} $$
となります.
任意定数を求める
最後に初期値を代入して任意定数を求めます.
これは同次微分方程式と同じ要領で求めます.
例えば,初期値が以下のように与えられていたとします.
\begin{eqnarray}
x(0) &=& 1\\
\frac{dx(0)}{dt} &=& 0
\end{eqnarray}
これを先程求めた一般解に代入します.
$$ x(0) = B = 1 $$
\begin{eqnarray}
\frac{dx}{dt} &=& Ae^{-2t}-2(At+B)e^{-2t}+3te^{-2t}-3t^2 e^{-2t} \\
\frac{dx(0)}{dt} &=& A-2B = 0 \\
\end{eqnarray}
$$ A = 2 $$
以上より,微分方程式の解は
$$ x = (2t+1)e^{-2t} + \frac{3}{2} t^2 e^{-2t}$$
となります.
まとめ
この記事では非同次微分方程式の解き方を解説しました.
非同次項がさまざまな形式で書かれていた場合の解説をしましたが,これがすべてではありません.
この記事では解説しきれなかったものもあると思います.
しかし,どのような形でも試行錯誤を繰り返していけば解くことができると思うので頑張ってください.
続けて読む
この記事では運動の自由応答を記述するための微分方程式の解法を示しましたが,制御器を搭載した場合はルンゲクッタという積分手法で数値シミュレーションを行うことになります.
以下の記事では数値シミュレーションを行う手順について解説しているので,数値シミュレーションをやりたい方は参考にしてください.
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それでは最後まで読んでいただきありがとうございました.
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