2次遅れ系の伝達関数を逆ラプラス変換して,求められた微分方程式を解く

制御工学

みなさん,こんにちは
おかしょです.

この記事では2次遅れ系の伝達関数を逆ラプラス変換する方法を解説します.

そして,求められた微分方程式を解いてどのような応答をするのかを確かめてみたいと思います.

この記事を読むと以下のようなことがわかる・できるようになります.

  • 逆ラプラス変換のやり方
  • 2次遅れ系の微分方程式
  • 微分方程式の解き方

 

この記事を読む前に

この記事では微分方程式を解きますが,微分方程式の解き方については以下の記事の方が詳細に解説しています.
微分方程式の解き方を知らない方は,以下の記事を先に読んだ方がこの記事の内容を理解できるかもしれないので以下のリンクから読んでください.

 

2次遅れ系の伝達関数とは

一般的な2次遅れ系の伝達関数は以下のような形をしています.

\[
G(s) = \frac{\omega^{2}}{s^{2}+2\zeta \omega s +\omega^{2}} \tag{1}
\]

上式において\(\zeta\)は減衰率,\(\omega\)は固有角振動数を意味しています.

これらの値はシステムによってきまり,入力に対する応答を決定します.

特徴的な応答として,\(\zeta\)が1より大きい時を過減衰,1の時を臨界減衰,1未満0以上の時を不足減衰と言います.

不足減衰の時のみ,応答が振動的になる特徴があります.

また,減衰率は負の値をとることはありません.

 

2次遅れ系の伝達関数の逆ラプラス変換

それでは,2次遅れ系の説明はこの辺にして
逆ラプラス変換をする方法を解説していきます.

そもそも,伝達関数はシステムの入力と出力の比を表します.
入力と出力のラプラス変換を\(U(s)\),\(Y(s)\)とします.

すると,先程の2次遅れ系の伝達関数は以下のように書きなおせます.

\[
\frac{Y(s)}{U(s)} = \frac{\omega^{2}}{s^{2}+2\zeta \omega s +\omega^{2}} \tag{2}
\]

逆ラプラス変換をするための準備として,まず左辺の分母を取り払います.

\[
Y(s) = \frac{\omega^{2}}{s^{2}+2\zeta \omega s +\omega^{2}} \cdot U(s) \tag{3}
\]

同じように,右辺の分母も取り払います.

\[
(s^{2}+2\zeta \omega s +\omega^{2}) \cdot Y(s) = \omega^{2} \cdot U(s) \tag{4}
\]

これで,両辺の分母を取り払うことができたので
かっこの中身を展開します.

\[
Y(s)s^{2}+2\zeta \omega Y(s) s +\omega^{2} Y(s) = \omega^{2} U(s) \tag{5}
\]

ここまでが,逆ラプラス変換をするための準備です.

準備が完了したら,逆ラプラス変換をします.

\(s\)を逆ラプラス変換すると1階微分,\(s^{2}\)を逆ラプラス変換すると2階微分を意味します.

つまり,先程の式を逆ラプラス変換すると以下のようになります.

\[
\ddot{y}(t)+2\zeta \omega \dot{y}(t)+\omega^{2} y(t) = \omega^{2} u(t) \tag{6}
\]

ここで,\(u(t)\)と\(y(t)\)は\(U(s)\)と\(Y(s)\)の逆ラプラス変換を表します.

この式を\(\ddot{y}(t)\)について解きます.

\[
\ddot{y}(t) = -2\zeta \omega \dot{y}(t)-\omega^{2} y(t) + \omega^{2} u(t) \tag{7}
\]

以上で,2次遅れ系の伝達関数の逆ラプラス変換は完了となります.

 

2次遅れ系の微分方程式を解く

微分方程式を解くうえで,入力項は制御器によって異なってくるので,今回は無視することにします.

つまり,今回解く微分方程式は以下になります.

\[
\ddot{y}(t) = -2\zeta \omega \dot{y}(t)-\omega^{2} y(t) \tag{8}
\]

この微分方程式を解くために,解を以下のように置きます.

\[
y(t) = e^{\lambda t} \tag{9}
\]

これを微分方程式に代入します.

\[
\begin{eqnarray}
\ddot{y}(t) &=& -2\zeta \omega \dot{y}(t)-\omega^{2} y(t)\\
\lambda^{2} e^{\lambda t} &=& -2\zeta \omega \lambda e^{\lambda t}-\omega^{2} e^{\lambda t}\\
(\lambda^{2}+2\zeta \omega \lambda+\omega^{2}) e^{\lambda t} &=& 0 \tag{10}
\end{eqnarray}
\]

これを\(\lambda\)について解くと以下のようになります.

\[
\lambda = -\zeta \omega \pm \omega \sqrt{\zeta^{2}-1} \tag{11}
\]

この時の右辺第2項に注目すると,ルートの中身の\(\zeta\)によって複素数になる可能性があることがわかります.

ここからは,\(\zeta\)の値によって解き方を解説していきます.

また,\(\omega\)についてはどの場合でも1として解説していきます.

 

\(\zeta\)が1よりも大きい時\((\zeta = 2)\)

\(\lambda\)にそれぞれの値を代入すると以下のようになります.

\[
\lambda = -2 \pm \sqrt{3} \tag{12}
\]

このことから,微分方程式の基本解は

\[
y(t) = e^{(-2 \pm \sqrt{3}) t} \tag{13}
\]

となります.

以下では見やすいように二つの\(\lambda\)を以下のように置きます.

\[
\lambda_{+} = -2 + \sqrt{3},\ \ \lambda_{-} = -2 – \sqrt{3} \tag{14}
\]

微分方程式の一般解は二つの基本解の線形和になるので,\(A\)と\(B\)を任意の定数とすると

\[
y(t) = Ae^{\lambda_{+} t} + Be^{\lambda_{-} t} \tag{15}
\]

となります.

次に,\(y(t)\)と\(\dot{y}(t)\)の初期値を1と0とすると,微分方程式の特殊解は以下のようにして求めることができます.

\[
y(0) = A+ B = 1 \tag{16}
\]

\[
\dot{y}(t) = A\lambda_{+}e^{\lambda_{+} t} + B\lambda_{-}e^{\lambda_{-} t} \tag{17}
\]

であるから

\[
\dot{y}(0) = A\lambda_{+} + B\lambda_{-} = 0 \tag{18}
\]

となります.
この2式を連立して解くことで,任意定数の\(A\)と\(B\)を求めることができます.

\[
\begin{eqnarray}
A &=& \frac{-\lambda_{-}}{\lambda_{+}-\lambda_{-}} \\
&=& \frac{2 + \sqrt{3}}{-2 + \sqrt{3}+2 + \sqrt{3}} \\
&=& \frac{2 + \sqrt{3}}{2 \sqrt{3}} \\
&=& \frac{3+2\sqrt{3}}{6} \tag{19}
\end{eqnarray}
\]

\[
\begin{eqnarray}
B &=& \frac{\lambda_{+}}{\lambda_{+}-\lambda_{-}} \\
&=& \frac{-2 + \sqrt{3}}{-2 + \sqrt{3}+2 + \sqrt{3}} \\
&=& \frac{-2 + \sqrt{3}}{2 \sqrt{3}} \\
&=& \frac{3-2\sqrt{3}}{6} \tag{20}
\end{eqnarray}
\]

以上より,微分方程式の解は

\[
y(t) = \frac{3+2\sqrt{3}}{6} e^{-2 + \sqrt{3} t} + \frac{3-2\sqrt{3}}{6} e^{-2 – \sqrt{3} t} \tag{21}
\]

となります.

 

\(\zeta\)が1の時

\(\lambda\)にそれぞれの値を代入すると以下のようになります.

\[
\lambda = -1 \tag{22}
\]

このことから,微分方程式の基本解は

\[
y(t) = e^{-t} \tag{23}
\]

となります.

今回のように重解となる場合は,微分方程式の一般解を以下のように置きます.

\[
y(t) = (At+B)e^{-t} \tag{24}
\]

次に,\(y(t)\)と\(\dot{y}(t)\)の初期値を1と0とすると,微分方程式の特殊解は以下のようにして求めることができます.

\[
y(0) = B = 1 \tag{25}
\]

\[
\dot{y}(t) = Ae^{-t} – (At+B)e^{-t} \tag{26}
\]

であるから

\[
\dot{y}(0) = A – B = 0 \tag{27}
\]

となります.
この2式を連立して解くことで,任意定数の\(A\)と\(B\)を求めることができます.

\[
A = 1,\ \ B = 1 \tag{28}
\]

以上より,微分方程式の解は

\[
y(t) = (t+1)e^{-t} \tag{29}
\]

となります.

 

\(\zeta\)が1未満の時\((\zeta = 0.5)\)

\(\lambda\)にそれぞれの値を代入すると以下のようになります.

\[
\lambda = -0.5 \pm i \sqrt{0.75} \tag{30}
\]

このことから,微分方程式の基本解は

\[
y(t) = e^{(-0.5 \pm i \sqrt{0.75}) t} \tag{31}
\]

となります.

微分方程式の一般解は二つの基本解の線形和になるので,\(A\)と\(B\)を任意の定数とすると

\[
y(t) = Ae^{(-0.5 + i \sqrt{0.75}) t} + Be^{(-0.5 – i \sqrt{0.75}) t} \tag{32}
\]

となります.

ここで,上の式を整理すると

\[
y(t) = e^{-0.5 t} (Ae^{i \sqrt{0.75} t} + Be^{-i \sqrt{0.75} t}) \tag{33}
\]

となります.

オイラーの公式というものを用いてさらに整理します.

オイラーの公式とは以下のようなものです.

\[
e^{ix} = \cos x +i \sin x \tag{34}
\]

これを用いると先程の式は以下のようになります.

\[
\begin{eqnarray}
y(t) &=& e^{-0.5 t} (Ae^{i \sqrt{0.75} t} + Be^{-i \sqrt{0.75} t}) \\
&=& e^{-0.5 t} \{A(\cos {\sqrt{0.75} t} +i \sin {\sqrt{0.75} t}) + B(\cos {\sqrt{0.75} t} -i \sin {\sqrt{0.75} t})\} \\
&=& e^{-0.5 t} \{(A+B)\cos {\sqrt{0.75} t}+i(A-B)\sin {\sqrt{0.75} t}\} \tag{35}
\end{eqnarray}
\]

ここで,\(A+B=\alpha,\ \ i(A-B)=\beta\)とすると

\[
y(t) = e^{-0.5 t}(\alpha \cos {\sqrt{0.75} t}+\beta \sin {\sqrt{0.75} t}) \tag{36}
\]

次に,\(y(t)\)と\(\dot{y}(t)\)の初期値を1と0とすると,微分方程式の特殊解は以下のようにして求めることができます.

\[
y(0) = \alpha = 1 \tag{37}
\]

\[
\dot{y}(t) = -0.5 e^{-0.5 t} (\alpha \cos {\sqrt{0.75} t}+\beta \sin {\sqrt{0.75} t})+e^{-0.5 t} (-\sqrt{0.75} \alpha \sin {\sqrt{0.75} t}+\sqrt{0.75} \beta \cos {\sqrt{0.75} t}) \tag{38}
\]

であるから

\[
\dot{y}(0) = -0.5\alpha + \sqrt{0.75} \beta = 0 \tag{39}
\]

となります.
この2式を連立して解くことで,任意定数の\(\alpha\)と\(\beta\)を求めることができます.

\[
\alpha = 1,\ \ \beta = \frac{\sqrt{3}}{30} \tag{40}
\]

以上より,微分方程式の解は

\[
y(t) = e^{-0.5 t} (\cos {\sqrt{0.75} t}+\frac{\sqrt{3}}{30} \sin {\sqrt{0.75} t}) \tag{41}
\]

となります.

応答の確認

先程,求めた解を使って応答の確認を行います.

その結果,以下のような応答を示しました.

応答を見ても,理論通りの応答となっていることが確認できました.

微分方程式を解くのは高校の時の数学や物理の問題と比べると,非常に難易度が高いです.

 

まとめ

この記事では2次遅れ系の伝達関数を逆ラプラス変換して,微分方程式を求めました.

ついでに,求めた微分方程式を解いて応答の確認を行いました.

逆ラプラス変換ができてしまえば,数値シミュレーションも簡単にできるので,微分方程式を解く必要はないですが,勉強にはなるのでやってみると良いかもしれません.

 

続けて読む

以下の記事では今回扱ったような2次遅れ系のシステムをPID制御器で制御しています.興味のある方は続けて参考にしてください.

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それでは最後まで読んでいただきありがとうございました.

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