みなさん,こんにちは
おかしょです.
制御工学を勉強し始めると,ほとんどの参考書で最初に伝達関数の求め方を解説しています.
伝達関数の求め方を解説するときに例としてRLC回路がよく利用されています.
また,授業の課題としても利用されることがあるので,求め方を解説したいと思います.
この記事を読むと以下のようなことがわかる・できるようになります.
- RLC回路とは
- RLC回路の伝達関数の求め方
この記事を読む前に
この記事ではRLC回路の伝達関数の求め方を解説します.
伝達関数とは何なのかなどの伝達関数の基礎を知りたい方は以下の記事を読んでからこちらの記事を読むことをおすすめします.
RLC回路とは
いろいろな参考書や授業で利用されるRLC回路ですが,これは以下のような電子回路のことを言います.
回路中のRは「抵抗」,Lは「コイル」,Cは「コンデンサ」を表しています.
この回路は制御工学でよく利用されています.
では,なぜこのRLC回路が制御工学で頻繁に利用されるのでしょうか.
その理由はラプラス変換をすればわかります.
抵抗にかかる電圧vは,小学校や中学校で習うようなオームの法則で求めることができます.
$$ v = R\times i $$
上の式でRは抵抗値,iは電流を表します.
この式をラプラス変換すると,以下のようになります.
$$ V = RI $$
ここでは,vのラプラス変換をV,iのラプラス変換をIとしています.
次にコイルにかかる電圧を見てみます.
コイルにかかる電圧は以下の式で求められます.
$$ v = L \frac{di}{dt} $$
これをラプラス変換すると
$$ V = LsI $$
となります.
次に,コンデンサにかかる電圧を求めます.
$$ v = \frac{1}{C} \displaystyle \int_{0}^{ t} id\tau $$
これをラプラス変換します.
$$ V = \frac{1}{Cs} I $$
以上のように,RLC回路の電圧を求めると微分器と積分器の両方とどちらも含まないものが出てきます.
制御工学では微分器や積分器によって,特性が大きく変わります.
そのため,RLC回路は制御工学でよく利用されます.
RLC回路の伝達関数を求める手順
それでは,RLC回路の伝達関数の求め方を解説していきます.
伝達関数を求める手順は以下のようになります.
- 電流の流れる向きを決める
- ループごとに電圧の関係式を求める
- 入力電圧と電流の伝達関数を求める
- 入力電圧と出力電圧の伝達関数を求める
ここからは以下のようなRLC回路を使って,伝達関数を求める手順を解説していきます.
この図の\(v_i\)は入力電圧,\(v_o\)は出力電圧を表していてこの伝達関数を求めます.
電流の向きを決める
まずは回路に流れる電流の向きを決めます.
通常は電流はプラスからマイナスに流れるので,その通りに電流の流れる向きを定義すればOKです.
ただ,複数のループがある時はどのように電流が流れるのかわからなくなることがあります.
このようなときはテキトーに電流の流れる向きを決めて構いません.
本当の電流の流れる向きは計算していけばわかるので,気にせずに行きましょう.
今回は以下のように電流の流れる向きを定義します.
ループごとの電圧の関係式を求める
次に電圧の関係式を求めます.
今回の場合はループは1つなので,電圧の関係式は1つだけです.
抵抗やコイル,コンデンサが並列に並ぶような回路の場合は,ループが複数になるので関係式も複数求める必要があります.
この伝達関数の関係式はキルヒホッフの法則を利用して求めます.
キルヒホッフの法則というのは,各電子部品にかかる電圧の和は入力電圧に等しくなるというものです.
この法則によって,電圧の関係式は以下のように求められます.
$$ v_i = Ri+L \frac{di}{dt}+\frac{1}{C} \displaystyle \int_{0}^{ t} id\tau $$
入力電圧と電流の伝達関数を求める
次に入力電圧\(v_i\)と電流iの伝達関数を求めます.
先程の電圧の関係式をラプラス変換すると以下のようになります.
$$ V_i =(R+Ls+\frac{1}{Cs}) I $$
これを整理して伝達関数を求めると
\begin{eqnarray}
\frac{I}{V_i} &=& \frac{1}{R+Ls+\frac{1}{Cs}} \\
&=& \frac{Cs}{LCs^2+RCs+1} \\
&=& \frac{\frac{1}{L} s}{s^2+\frac{R}{L}s+\frac{1}{LC}}
\end{eqnarray}
となり,入力電圧と電流の伝達関数を求めることができました.
入力電圧と出力電圧の伝達関数を求める
最後に入力電圧と出力電圧の伝達関数を求めます.
RLC回路の図を見ると,出力電圧とコンデンサーにかかる電圧は一致していることがわかります.
$$ V_o = \frac{1}{Cs} I $$
この式を電流Iについて解くと以下のようになります.
$$ I = CsV_o $$
これを先程の入力電圧と電流の伝達関数に代入します.
\begin{eqnarray}
\frac{CsV_o}{V_i} &=& \frac{\frac{1}{L} s}{s^2+\frac{R}{L}s+\frac{1}{LC}} \\
\frac{V_o}{V_i} &=& \frac{\frac{1}{LC}}{s^2+\frac{R}{L}s+\frac{1}{LC}} \\
\end{eqnarray}
このようにしてRLC回路の伝達関数を求めることができました.
まとめ
この記事では
RLC回路の伝達関数の求め方を順を追って解説しました
複数のループを有するRLC回路の伝達関数でも同じような手順で計算すれば解けますので,やってみてください.
続けて読む
制御工学を学び始めて最初に求める伝達関数がRLC回路の方が多いと思います.
RLC回路で伝達関数を求める方法が理解できたら,他のシステムの伝達関数も求めてみましょう.
以下の記事ではP制御と呼ばれる制御器の伝達関数を求めているので,続けて読んでみてください.
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それでは最後まで読んでいただきありがとうございました.
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