台車型倒立振子の運動方程式をニュートン法で導出する方法

制御工学

みなさん,こんにちは
おかしょです.

高校の物理では非常に簡単なシステムの運動方程式をニュートン法によって求めます.しかし,実際に身の回りにあるシステムは簡単な構造のものばかりではありません.

大学ではそのような複雑なシステムの運動方程式も求めることができるように,システムの構造を少しづつ複雑にしていって運動方程式を求めていきます.

この記事で解説する台車型倒立振子はその第一歩として考えることができます.

この記事を読むと以下のようなことがわかる・できるようになります.

  • 台車型倒立振子の運動方程式
  • ニュートン法による運動方程式の求め方

この記事を読む前に

これから台車型倒立振子の数値シミュレーションを行いたい方は,以下の記事もおすすめです.以下の記事で数値シミュレーションを行う手順を確認してからこの記事を読むと目的がはっきりして学習意欲を持続することができると思います.

もちろん以下の記事を読まなくてもこの記事は理解できるように解説していますので,興味のない方はこのまま続けて読んでください.

座標系の定義

台車型倒立振子の運動方程式はニュートン法で求めることができます.まずは台車型倒立振子の座標系を以下に示します.

ニュートンの運動方程式

台車型倒立振子の運動方程式はニュートン法と呼ばれる方法で求めることができます.運動方程式を求める有名な方法としてラグランジュ法とニュートン法があるのですが,ニュートン法というのは中学や高校で習うような運動方程式を求める方法と同じです.

つまり,ニュートンの運動方程式は以下の式で与えられます.

\begin{eqnarray}
F&=&m\ddot{x}\tag{1} \\
M&=&J\ddot{\theta}\tag{2}
\end{eqnarray}

上の式が並進運動方程式,下の式が回転運動方程式と呼ばれます.

台車型倒立振子に対しても同様の式を求めます.

台車の運動方程式

まずは台車の運動方程式を求めます.台車の運動は回転をしないので式(1)の並進運動方程式のみ求めます.上図の座標系より,台車の位置は\(z\)によって表されるので,並進運動方程式は以下のようになります.

\begin{eqnarray}
m_c \ddot{z}&=&f-f_d-H\tag{3}
\end{eqnarray}

ここで,\(m_c\)は台車の質量,\(f\)は駆動力,\(f_d\)は台車に働く空気抵抗力,\(H\)は振り子から受ける力を表しています.

運動方程式を求める際に忘れられがちですが,物体が接しているところには必ず力が働きます.そのため,振り子から受ける力も考慮して運動方程式を求める必要があります.この時,台車が振り子から受ける力や振り子が台車から受ける力は以下のようになります.

それぞれの力の大きさは作用反作用の法則より等しくなります.また,空気抵抗力は台車に働く粘性抵抗係数\(\mu_c\)を用いて以下の式で求められます.

\begin{eqnarray}
f_d &=& \mu_c \dot{z} \tag{4}
\end{eqnarray}

よって,台車の並進運動方程式は以下のようになります.

\begin{eqnarray}
m_c \ddot{z}&=&f- \mu_c \dot{z} -H \tag{5}
\end{eqnarray}

振り子の運動方程式

次に振り子の運動方程式を求めます.普通の振り子であれば並進方向に動くことはないのですが,台車の上に乗っているため並進方向にも運動します.また,重心が振られるため水平方向だけでなく鉛直方向にも運動します.

したがって,振り子は並進方向と回転方向に運動することになります.

並進方向

振り子の水平方向の運動方程式は以下のようになります.

\begin{eqnarray}
m_p \ddot{x}&=& H \tag{6}
\end{eqnarray}

ここで,\(m_p\)は振り子の質量を表しています.

続いて,鉛直方向の運動方程式は以下のようになります.

\begin{eqnarray}
m_p \ddot{y}&=& V-m_p g \tag{7}
\end{eqnarray}

振り子の並進方向の運動方程式は以上のようになります.

回転方向

次に回転方向の運動方程式を求めると以下のようになります.

\begin{eqnarray}
J_p \ddot{\theta}&=& -\tau_d+V \sin \theta \cdot l_p-H \cos \theta \cdot l_p \tag{8}
\end{eqnarray}

ここで,\(J_p\)は振り子の慣性モーメント,\(\tau_d\)は空気抵抗によって生じるトルクを表しています.この\(\tau_d\)は粘性抵抗係数\(\mu_p\)を用いて次式によって求めることができます.

\begin{eqnarray}
\tau_d&=&\mu_p \dot{\theta} \tag{9}
\end{eqnarray}

したがって,振り子の回転運動方程式は以下のように書き直すことができます.

\begin{eqnarray}
J_p \ddot{\theta}&=& -\mu_p \dot{\theta}+V \sin \theta \cdot l_p-H \cos \theta \cdot l_p \tag{10}
\end{eqnarray}

回転運動方程式を求める際は台車からの反作用によるトルクも忘れないようにしてください.また,反作用によるトルクの正負の向きにも注意が必要です.トルクの正負も振り子の角度\(\theta\)に従って決まります.

以上が,台車と振り子の運動方程式になるのですが,このままではまだ不十分です.

上式では振り子の位置を台車に固定された動座標系\((x,\ y)\)で表しています.これを台車と同じ\(z\)で表さなければ台車と振り子の位置がちぐはぐになってしまいます.

また,作用反作用の法則に則った\(H\)と\(V\)は未知なので,その項をまとめる必要があります.

以下では,これらの問題点を解決します.

  1. 台車と振り子で座標系が異なる
  2. \(H\)と\(V\)が未知

台車型倒立振子の運動方程式

まずは振り子の位置を台車の位置\(z\)で表すと以下のようになります.

\begin{eqnarray}
x&=&z+l_p \sin \theta\tag{11}\\
y&=&l_p \cos \theta \tag{12}
\end{eqnarray}

運動方程式に代入するために,この式を時間微分します.

\begin{eqnarray}
\dot{x}&=&\dot{z}+l_p \dot{\theta} \cos \theta\tag{13}\\
\dot{y}&=&-l_p \dot{\theta} \sin \theta \tag{14}
\end{eqnarray}

さらに時間微分すると以下のようになります.

\begin{eqnarray}
\ddot{x}&=&\ddot{z}+l_p \ddot{\theta} \cos \theta- l_p \dot{\theta}^2 \sin \theta  \tag{14}\\
\ddot{y}&=&-l_p \ddot{\theta} \sin \theta- l_p \dot{\theta}^2 \cos \theta \tag{15}
\end{eqnarray}

これらを振り子の並進運動方程式に代入します.

\begin{eqnarray}
m_p \ddot{x}&=& H \\
m_p (\ddot{z}+l_p \ddot{\theta} \cos \theta- l_p \dot{\theta}^2 \sin \theta )&=& H \\
m_p\ddot{z}+ m_p l_p \ddot{\theta} \cos \theta- m_p l_p \dot{\theta}^2 \sin \theta&=& H \tag{16}
m_p \ddot{y}&=& V-m_p g \\
m_p (-l_p \ddot{\theta} \sin \theta- l_p \dot{\theta}^2 \cos \theta )&=& V-m_p g \\
– m_p l_p \ddot{\theta} \sin \theta- m_p l_p \dot{\theta}^2 \cos \theta + m_p g &=& V \tag{17}
\end{eqnarray}

この結果,\(H\)と\(V\)が求められたので台車の並進運動方程式と振り子の回転運動方程式にそれぞれ代入します.

\begin{eqnarray}
m_c \ddot{z}&=&f- \mu_c \dot{z} -H \\
m_c \ddot{z}&=&f- \mu_c \dot{z} –( m_p\ddot{z}+ m_p l_p \ddot{\theta} \cos \theta- m_p l_p \dot{\theta}^2 \sin \theta) \\
(m_c+ m_p) \ddot{z}+ m_p l_p \ddot{\theta} \cos \theta &=& m_p l_p \dot{\theta}^2 \sin \theta -\mu_c \dot{z}+f \tag{18}\\
J_p \ddot{\theta}&=& -\mu_p \dot{\theta}+V \sin \theta \cdot l_p-H \cos \theta \cdot l_p \\
J_p \ddot{\theta}&=& -\mu_p \dot{\theta}+(-m_p l_p \ddot{\theta} \sin \theta- m_p l_p \dot{\theta}^2 \cos \theta + m_p g) \sin \theta \cdot l_p-(m_p\ddot{z}+ m_p l_p \ddot{\theta} \cos \theta- m_p l_p \dot{\theta}^2 \sin \theta)\cos \theta \cdot l_p \\
J_p \ddot{\theta}&=& -\mu_p \dot{\theta}-m_p l_p^2 \sin^2 \theta \cdot \ddot{\theta}-m_p l_p^2 \sin \theta \cos \theta \cdot \dot{\theta}^2+m_p l_p g \sin \theta-m_p l_p \cos \theta \cdot \ddot{z}-m_p l_p^2 \cos^2 \theta \cdot \ddot{\theta}+m_p l_p^2 \sin \theta \cos \theta \dot{\theta}^2 \\
m_p l_p \cos \theta \cdot \ddot{z}+(J_p+m_p l_p^2)\ddot{\theta}&=& m_p l_p g \sin \theta-\mu_p \dot{\theta}\tag{19}
\end{eqnarray}

以上の2式が台車型倒立振子の運動方程式となります.

まとめ

この記事では台車型倒立振子の運動方程式をニュートン法によって求める方法を解説しました.

最後に台車型倒立振子の運動方程式は以下のようになりました.

\begin{eqnarray}
(m_c+ m_p) \ddot{z}+ m_p l_p \ddot{\theta} \cos \theta= m_p l_p \dot{\theta}^2 \sin \theta -\mu_c \dot{z}+f \\
m_p l_p \cos \theta \cdot \ddot{z}+(J_p+m_p l_p^2)\ddot{\theta}= m_p l_p g \sin \theta-\mu_p \dot{\theta}
\end{eqnarray}

続けて読む

今回求めた運動方程式を使って数値シミュレーションをすることができます.その方法については以下の記事で解説しているので,そちらを参考にしてください.

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それでは最後まで読んでいただきありがとうございました.

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