みなさん,こんにちは
おかしょです.
古典制御工学を学んでいると,1次遅れ系の次に2次遅れ系と呼ばれる伝達関数を使って学習をします.このシステムはある周波数の入力が加わるとゲインが大きくなるシステムで,ボード線図を描く際の題材としてもよく用いられます.
この記事では2次遅れ系の伝達関数で表されるシステムを数値シミュレーションができるように時間領域にい変換したり,ボード線図を使ってシステムの特徴を解説していきます.
この記事を読むと以下のようなことがわかる・できるようになります.
- 2次遅れ系の伝達関数を時間領域に変換する方法
- 2次遅れ系のボード線図の描き方
- 2次遅れ系のパラメータの特徴
この記事を読む前に
この記事では伝達関数を時間領域に変換するために逆ラプラス変換を使います.逆ラプラス変換について詳しいことは以下の記事で解説しているので,そちらを先に読んでおくことをおすすめします.
2次遅れ系の伝達関数とは
2次遅れ系の伝達関数は以下のような形をしています.
\begin{eqnarray}
G(s)&=&\frac{\omega_n^2}{s^2+2\zeta \omega_n s+\omega_n^2}\tag{1}
\end{eqnarray}
ここで,\(\zeta\)は減衰係数,\(\omega_n\)は固有周波数と呼ばれるシステムを特徴づけるパラメータです.
時間領域に変換する意味
上の伝達関数を数値シミュレーションするには,MATLABであれば,SimulinkでTransfer fcnブロックを用いれば簡単にできます.しかし,この場合は初期値は0としてシミュレーションを行うことになってしまいます.
これは伝達関数が初期値を0としたときのシステムの入出力の比を表すからで,これは仕方がないことです.そのため初期値を考慮するには,上の伝達関数を逆ラプラス変換する必要があります..
時間領域に変換する方法
式(1)の伝達関数を時間領域に変換すると以下のようになります.
まずは式(1)を逆ラプラス変換がしやすいように整理します.
\begin{eqnarray}
\frac{Y(s)}{U(s)}&=&\frac{\omega_n^2}{s^2+2\zeta \omega_n s+\omega_n^2}\\
Y(s^2+2\zeta \omega_n s+\omega_n^2)&=&\omega_n^2 U\tag{2}
\end{eqnarray}
これを逆ラプラス変換すると以下のようになります.
\begin{eqnarray}
\ddot{y}+2\zeta \omega_n \dot{y}+\omega_n^2 y&=&\omega_n^2 u\\
\ddot{y}&=&-2\zeta \omega_n \dot{y}-\omega_n^2 y+\omega_n^2 u\tag{3}
\end{eqnarray}
この式が式(1)の2次遅れ系の伝達関数を時間領域で表した場合の式になります.
これを行列表記で表すと以下のようになります.
\begin{eqnarray}
\frac{d}{dt} \begin{bmatrix}
\dot{y}\\ y
\end{bmatrix}&=&
\begin{bmatrix}
-2\zeta \omega_n & \omega_n^2\\
1 & 0
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
\dot{y}\\ y
\end{bmatrix}+
\begin{bmatrix}
\omega_n^2\\ 0
\end{bmatrix} u \tag{4}
\end{eqnarray}
2次遅れ系のボード線図を描く方法
このシステムを解析するためにボード線図を描きます.
ボード線図を描くための準備
ボード線図を描くためには伝達関数に\(s=j\omega\)を代入して,実部と虚部を求める必要があります.まずは式(1)で表される伝達関数に\(s=j\omega\)を代入すると以下のようになります.
\begin{eqnarray}
G(j\omega)&=&\frac{\omega_n^2}{(j\omega)^2+2\zeta \omega_n j\omega+\omega_n^2}\\
&=&\frac{\omega_n^2}{-\omega^2+\omega_n^2+2j\zeta \omega_n \omega} \times \frac{-\omega^2+ \omega_n^2 -2j\zeta \omega_n \omega }{-\omega^2+\omega_n^2-2j\zeta \omega_n \omega}\\
&=&\frac{\omega_n^2(-\omega^2+\omega_n^2)- 2j\zeta \omega_n^3 \omega }{(-\omega^2+\omega_n^2)^2 +4\zeta^2 \omega_n^2 \omega^2}\tag{5}
\end{eqnarray}
このままでは計算がしづらいので,分母分子を\(\omega_n^4\)で割る.
\begin{eqnarray}
G(j\omega)&=& \frac{ (-\frac{\omega^2}{\omega_n^2}+1)- 2j\zeta \frac{\omega}{\omega_n}}{(-\frac{\omega^2}{\omega_n^2}+1)^2 +4\zeta^2\frac{\omega^2}{\omega_n^2}}\tag{6}
\end{eqnarray}
以上より
\begin{eqnarray}
Re(j\omega)&=&\frac{-\frac{\omega^2}{\omega_n^2}+1}{(-\frac{\omega^2}{\omega_n^2}+1)^2 +4\zeta^2\frac{\omega^2}{\omega_n^2}}\tag{7}
\end{eqnarray}
\begin{eqnarray}
Im(j\omega)&=&\frac{-2\zeta\frac{\omega}{\omega_n}}{(-\frac{\omega^2}{\omega_n^2}+1)^2 +4\zeta^2\frac{\omega^2}{\omega_n^2}}\tag{8}
\end{eqnarray}
対数ゲイン
したがって,対数ゲインは
\begin{eqnarray}
20 \log_{10} |G(j\omega)| &=&20\log_{10}\sqrt{Re(j\omega)^2+Im(j\omega)^2}\\
&=&20 \log_{10}\sqrt{\left\{\frac{-\frac{\omega^2}{\omega_n^2}+1}{\left(-\frac{\omega^2}{\omega_n^2} +1\right)^2+4\zeta^2\frac{\omega^2}{\omega_n^2}}\right\}^2+\left\{\frac{-2\zeta \frac{\omega}{\omega_n}}{\left(-\frac{\omega^2}{\omega_n^2}+1\right)^2 +4\zeta^2 \frac{\omega^2}{\omega_n^2}}\right\}^2}\\
&=&20 \log_{10} \frac{\sqrt{\left(-\frac{\omega^2}{\omega_n^2}+1\right)^2+4\zeta^2\frac{\omega^2}{\omega_n^2}}}{\left(-\frac{\omega^2}{\omega_n^2}+1\right)^2 +4\zeta^2 \frac{\omega^2}{\omega_n^2}}\\
&=&20 \log_{10} \left\{\left(-\frac{\omega^2}{\omega_n^2} +1\right)^2 +4\zeta^2 \frac{\omega^2}{\omega_n^2}\right\}^{-\frac{1}{2}}\\
&=&-10 \log_{10} \left\{\left(-\frac{\omega^2}{\omega_n^2} +1\right)^2 +4\zeta^2 \frac{\omega^2}{\omega_n^2}\right\}\tag{9}
\end{eqnarray}
位相
続いて,位相は以下のようになります.
\begin{eqnarray}
\angle G(j\omega) &=&\tan^-1 \frac{ Im(j\omega)}{Re(j\omega)}\\
&=&\tan^-1 \frac{\frac{-2\zeta\frac{\omega}{\omega_n}}{\left(-\frac{\omega^2}{\omega_n^2}+1\right)^2 +4\zeta^2\frac{\omega^2}{\omega_n^2}}}{\frac{-\frac{\omega^2}{\omega_n^2}+1}{\left(-\frac{\omega^2}{\omega_n^2}+1\right)^2 +4\zeta^2\frac{\omega^2}{\omega_n^2}}}\\
&=&\tan^-1 \frac{-2\zeta\frac{\omega}{\omega_n}}{-\frac{\omega^2}{\omega_n^2}+1}\tag{10}
\end{eqnarray}
ボード線図から読み解く2次遅れ系の特徴
以上の数式をグラフで描くと以下のようなボード線図が得られます.
減衰係数を変化させた場合
このボード線図は固有角周波数\(\omega_n\)を1に固定して減衰率のみを変化させた結果です.
まずはゲイン線図を見ると,減衰率を小さくすると共振現象が起きていることがわかります.さらに,小さくすればするほど共振によるゲインの増大が大きくなることが容易に想像できます.
反対に減衰率が小さければ共振現象は現れませんが,低周波数の入力もカットすることになってしまいます.
位相線図を見ると,減衰率が小さいほど傾きが急になっていることがわかります.減衰率が大きい場合は位相が低周波数領域で-90度に収束してから,高周波数領域で-180度に収束しています.
このことから減衰率を小さくすれば,低周波数の入力が印加されても出力が遅れることはありませんが,ある周波数を超えると位相が180度遅れることがわかります.また,どの減衰率でも周波数が1 rad/secを境に位相が変化していることがわかります.これはこのシステムの固有周波数\(\omega_n\)が1に設定されているためです.
固有角周波数を変化させた場合
次に固有周波数\(\omega_n\)を変化させた場合のボード線図は以下のようになります.
ここでは,減衰係数\(zeta\)は0.01として,固有角周波数\(\omega_n\)を変化させました.
図を見ると明らかなように,固有周波数を変化させると共振周波数が変化します.つまり,固有周波数\(\omega_n\)=共振周波数と言うことができます.
また,固有周波数を変化させてもゲインや位相の大きさに変化は見られないことがわかります.
まとめ
この記事では2次遅れ系の伝達関数を時間領域に変換する方法とボード線図の描き方,およびその特徴などを解説しました.
2次遅れ系はパラメータの設定によって応答が大きく変わるので,実際にシミュレーションをして確認するとより深く理解ができると思います.
続けて読む
今回解説した2次遅れ系のシステムにPID制御器を適用した例を以下の記事で解説しています.制御工学の学習をしている方は以下の記事を参考にしてみてください.
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それでは最後まで読んでいただきありがとうございました.
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