ブロック線図の簡単化・伝達関数の求め方

制御工学

みなさん,こんにちは
おかしょです.

今回は複雑なブロック線図を簡単化して,伝達関数を求める方法について解説していきます.

私が大学でブロック線図の簡単化を習った時は,ブロック線図の形と伝達関数の形を覚えるというものでした.

しかし,私は暗記するのが好きじゃないし得意でもないので,独流で求め方を編み出しました.

独流というほど大したものではないのですが,参考にしていただけると幸いです.

この記事を読むと以下のようなことがわかる・できるようになります.

  • ブロック線図を簡単化する方法
  • ブロック線図とは

 

この記事を読む前に

ブロック線図を簡単化するには伝達関数の知識がある程度必要になります.

以下の記事では伝達関数とは何かなどを解説しているので,そちらを先に読んでおくことをおすすめします.

 

ブロック線図とは

まず,ブロック線図とは何かについて簡単に説明します.

ブロック線図というのは,システムの入出力関係をブロックや矢印などの図で表したもののことを言います.

例えば,以下のような伝達関数で表されるシステムがあったとします.

$$ G(s) = \frac{K}{Ts+1} $$

これをブロック線図で表すと以下のようになります.

01. ブロック線図1

このように伝達関数が簡単であれば,ブロック線図も簡単に表せます.

しかし,論文などを読んでいると伝達関数もよくわからず,ブロック線図もごちゃごちゃしていてよくわからないことがあります.

このとき,人によっては数式を読み解いていった方が理解しやすい人と,ブロック線図から読み解いていった方が理解しやすい人がいます.

ブロック線図から読み解いていく場合,複雑なブロック線図を簡単化するとより理解がしやすくなります.
以下では,その簡単化について解説します.

 

ブロック線図を簡単化する方法

制御手法によってさまざまなブロック線図が存在しますが,基本的にはどのようなブロック線図もこれから説明する方法で簡単化ができます.

なので,ここで解説している簡単化を覚えて,論文や参考書に書かれているブロック線図を簡単化してみてください.

まずは例として,以下のようなPID制御のブロック線図を簡単化します.
制御対象の伝達関数は\(G(s)\)とします.

02. PIDブロック線図

ブロック線図を簡単化するには,目標値から出力までの伝達関数を求めてしまいます.

まずは左辺に出力\(y\)を置きます.

$$ Y= $$

右辺にはブロック線図の左側から順番に計算式を書いていきます.
PIDの例の場合は,まず目標値\(R\)と出力\(Y\)の差をとっています.

$$ Y = (R-Y)… $$

ここで,数式の最後に「…」としていますが,\((R-Y)\)が永遠に続くという意味ではなく,式がこれで終わりではないためこのような記号を付けています.
次に,その差が分岐してP・I・Dのそれぞれにかけられ,最終的に和を求めます.

\begin{eqnarray}
Y &=& (R-Y)K_{P}+(R-Y)\frac{1}{s} K_{I}+(R-Y)s K_{D}… \\
&=& (R-Y)(K_{P}+\frac{1}{s} K_{I}+s K_{D})…
\end{eqnarray}

そして,最後に制御対象\(G(s)\)が掛けられて,左辺とイコールになります.

$$ Y = (R-Y)(K_{P}+\frac{1}{s} K_{I}+s K_{D})G(s) $$

この式を整理して伝達関数を求めれば簡単化ができます.

\begin{eqnarray}
Y &=& (R-Y)(K_{P}+\frac{1}{s} K_{I}+s K_{D})G(s)\\
Y\{1+(K_{P}+\frac{1}{s} K_{I}+s K_{D})G(s)\} &=& R(K_{P}+\frac{1}{s} K_{I}+s K_{D})G(s)\\
\frac{Y}{R} &=& \frac{(K_{P}+\frac{1}{s} K_{I}+s K_{D})G(s)}{1+(K_{P}+\frac{1}{s} K_{I}+s K_{D})G(s)}\\
\end{eqnarray}

このようにすることで,伝達関数からブロック線図を書くと以下のように簡単化できます.

03. PIDブロック簡単化

ここで,分母や分子に積分器の分数が入っていると気持ちが悪いので,制御対象を先程と同じように以下の1次遅れ系のシステムであったとすると

$$ G(s) = \frac{K}{Ts+1} $$

PID制御の伝達関数は以下のようになります.

\begin{eqnarray}
\frac{Y}{R} &=& \frac{(K_{P}+\frac{1}{s} K_{I}+s K_{D})\frac{K}{Ts+1}}{1+(K_{P}+\frac{1}{s} K_{I}+s K_{D})\frac{K}{Ts+1}}\\
&=& \frac{K(K_{P}+\frac{1}{s} K_{I}+s K_{D})}{Ts+1+K(K_{P}+\frac{1}{s} K_{I}+s K_{D})}\\
&=& \frac{s^{2} K_{D}K+ s K_{P}K+K_{I}K}{s^{2} (T+K_{D}K)+s(1+K_{P}K)+K_{I}K}\\
\end{eqnarray}

つまり,ブロック線図は最終的に以下のようになります.

04. 1次遅れ系PIDブロック簡単化

 

まとめ

この記事ではブロック線図の簡単化のやり方とブロック線図から伝達関数を求める方法について解説してきました.

以下にその手順をまとめると

  1. 左辺に出力を置く
  2. ブロック線図の左から計算方法を右辺に書いていく
  3. 数式を整理して,伝達関数を求める
  4. 求めた伝達関数をブロック線図にする

これだけでブロック線図から伝達関数を求めて,簡単化までできます.

順を追って簡単化を行えば,どのようなブロック線図でも伝達関数を求めたり簡単化することができます.

 

続けて読む

この記事ではブロック線図を簡単化する方法について解説しましたが,以下の記事では伝達関数をブロック線図にする方法を解説しています.

論文を書く場合は伝達関数とブロック線図の両方を書くと説得力が増すので,以下の記事を参考にしてください.

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それでは最後まで読んでいただきありがとうございました.

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