みなさん,こんにちは
おかしょです.
ロボットの制御をするときは,あらかじめそのロボットの特徴をしっかりと理解しておく必要があります.
ロボットの特徴を理解するために,適当な入力をロボットに加えて応答からシステムの解析を行います.
システムの解析方法はさまざまありますが,この記事では応答のデータから時定数や整定時間などを求める方法を解説していきます.
この記事を読むと以下のようなことがわかる・できるようになります.
- システムの解析方法
- 時定数とは
- ピーク時間とは
- 最大行き過ぎ量とは
- 整定時間とは
- 立ち上がり時間とは
この記事を読む前に
この記事では解説のために伝達関数を用いています.
伝達関数について知らない方は以下の記事を先に読んでおくことをおすすめします.
時定数とは
時定数というのは,システムの応答が目標値の約63.2%に達するまでの時間を言います.
この時定数は以下のような一次遅れのシステムを解析するときに用いられます.
$$ G(s) = \frac{K}{Ts+1} $$
この伝達関数のTが時定数を表しています.
このとき,なぜ目標値の63.2%に到達するまでの時間なのか気になります.
この理由は,このシステムに以下のように単位ステップ入力を加えて逆ラプラス変換をすればわかります.
\begin{eqnarray}
Y(s) &=& \frac{K}{Ts+1} \frac{1}{s} \\
&=& \frac{K}{s}-\frac{KT}{Ts+1}\\
&=& \frac{K}{s}-\frac{K}{s+\frac{1}{T}}\\
\end{eqnarray}
\begin{eqnarray}
y(t) &=& K-Ke^{-\frac{1}{T} t}\\
&=& K(1-e^{-\frac{1}{T} t})
\end{eqnarray}
上の式では,まず伝達関数に単位ステップ入力を加えて部分分数分解をしています.
その後に逆ラプラス変換をしてシステムの時間応答を算出しています.
ここで,定数ゲインKを1とします.
時定数Tというのは目標値の63.2%に達するまでの時間だと言いました.
そこで,経過時間tが時定数Tと一致した時のことを考えます.
すると時間応答y(t)は
$$ y(t) =1-e^{-1} $$
となります.これを計算すると0.632…となり,約63.2%だと分かります.
ピーク時間とは
ピーク時間というのは名前からだいたい想像できると思いますが,応答が最大値に達した時の時間を言います.
これは応答が振動的になっていた時に用いられます.
例えば,応答のデータのみが与えられている場合は応答の最大値をExcelのmaxコマンドを使用するなどして求めて,その時の時間を調べればそれがピーク時間です.
応答のデータではなく,以下のようなシステムの伝達関数が2次遅れ系で与えられていた場合を考えてみます.
$$ G(s) = \frac{\omega^2}{s^2+2\zeta \omega s+\omega^2} $$
ピーク時間は振動的な応答でないと求めることが出いないので,ここでは不足減衰(\(0<\zeta<1\))の時を考えます.
このシステムに単位ステップ入力が加えられた時,システムの応答は以下の式によって表すことができます.
\begin{eqnarray}
Y(s) &=& \frac{\omega^2}{s^2+2\zeta \omega s+\omega^2} \frac{1}{s} \\
&=& \frac{1}{s}- \frac{s+2\zeta \omega}{s^2+2\zeta \omega s+\omega^2} \\
\end{eqnarray}
ここで,sin波とcos波のラプラス変換は
$$ sin波 = \frac{\omega}{s^2+\omega^2} $$
$$ cos波 = \frac{s}{s^2+\omega^2} $$
であったから,上の部分分数分解した式をこれらに寄せると以下のようになります.
\begin{eqnarray}
Y(s) &=& \frac{1}{s}- \frac{s+2\zeta \omega}{s^2+2\zeta \omega s+\omega^2} \\
&=& \frac{1}{s}- \frac{(s+\zeta \omega)+\zeta \omega}{(s+\zeta \omega)^2+\omega^2 (1-\zeta^2)} \\
&=& \frac{1}{s}- \frac{(s+\zeta \omega)+\frac{\zeta}{\sqrt{1-\zeta^2}} \omega \sqrt{1-\zeta^2}}{(s+\zeta \omega)^2+\omega^2 (1-\zeta^2)} \\
&=& \frac{1}{s}- \frac{s+\zeta \omega}{(s+\zeta \omega)^2+\omega^2 (1-\zeta^2)} -\frac{\frac{\zeta}{\sqrt{1-\zeta^2}} \omega \sqrt{1-\zeta^2}}{(s+\zeta \omega)^2+\omega^2 (1-\zeta^2)} \\
\end{eqnarray}
これを逆ラプラス変換します.
\begin{eqnarray}
y(t) &=& 1-e^{-\zeta \omega t} \cos \omega \sqrt{1-\zeta^2} t -e^{-\zeta \omega t} \frac{\zeta}{\sqrt{1-\zeta^2}} \sin \omega \sqrt{1-\zeta^2} t\\
&=& 1-e^{-\zeta \omega t}\left( \cos \omega \sqrt{1-\zeta^2} t + \frac{\zeta}{\sqrt{1-\zeta^2}} \sin \omega \sqrt{1-\zeta^2} t \right)
\end{eqnarray}
これが2次遅れ系に単位ステップ入力を加えた時の応答を表します.
これではまだ式が見づらいので,三角関数の合成を行って整理します.
\begin{eqnarray}
y(t) &=& 1-e^{-\zeta \omega t}\left( \cos \omega \sqrt{1-\zeta^2} t + \frac{\zeta}{\sqrt{1-\zeta^2}} \sin \omega \sqrt{1-\zeta^2} t \right)\\
&=& 1-\frac{1}{\sqrt{1-\zeta^2}}e^{-\zeta \omega t} \cos \left \{\omega \sqrt{1-\zeta^2} t- \tan^{-1} \left( \frac{\zeta}{\sqrt{1-\zeta^2}} \right) \right \}
\end{eqnarray}
ピーク時間はこの波形が最大となる時の経過時間を表します.
波形が最大値を示す時は傾きが0になるので,その時を微分して調べます.
上の式を微分すると以下のようになります.
$$ \dot{y}(t) = \frac{\omega}{\sqrt{1-\zeta^2}} e^{-\zeta \omega t} \sin \omega \sqrt{1-\zeta^2} t $$
この値が0になる時の時間tは
\begin{eqnarray}
\frac{\omega}{\sqrt{1-\zeta^2}} e^{-\zeta \omega t} \sin \omega \sqrt{1-\zeta^2} t &=& 0 \\
\omega \sqrt{1-\zeta^2} t &=& k \pi \\
t &=& \frac{k \pi}{\omega \sqrt{1-\zeta^2}}
\end{eqnarray}
ここで,kは1以上の整数です.
今回考えている不足減衰の2次遅れ系は時間の経過とともに減衰していくので,最初に傾きが0となる時が最大値をとる時間となります.つまり,ピーク時間です.
ピーク時間となるのはkが1の時です.
従って,ピーク時間は
$$ t = \frac{\pi}{\omega \sqrt{1-\zeta^2}}$$
となります.
以上のように,システムの伝達関数からピーク時間を求めることはできますが,計算が複雑になってしまいます.
システムの数式ではなく,応答のデータのみが与えられている場合はグラフなどから測定すればいいだけなので非常に簡単にピーク時間を求めることができます.
最大行き過ぎ量とは
最大行き過ぎ量とは,目標値と応答の最大値との差のことを言います.
これを割合(%)で表示したものはパーセント行き過ぎ量と言います.
この値はピーク時間を求めることができていたら,簡単に求めることができます.
整定時間とは
整定時間というのは,応答が目標値の±2%以内になるまでにかかる時間のことです.
応答が振動的なときは±2%以内に到達しても,その後に振動して±2%以上になることがあります.
整定時間はその時間を過ぎても応答が±2%以上になることはないので注意してください.
立ち上がり時間とは
立ち上がり時間というのは目標値の10%から90%に到達するまでにかかる時間のことを言います.
この時間は,よくシステムの入力に対する即応性として扱われます.
この立ち上がり時間が短ければ短いほど,即応性が良いと言えます.
しかし,この立ち上がり時間が短いシステムは最大行き過ぎ量が大きくなりがちなので注意が必要です.
まとめ
この記事ではシステムの解析のために用いられる時定数や整定時間などの解説をしました.
伝達関数から算出することもできますが,伝達関数が複雑であればあるほど計算も複雑になってしまうので,グラフから求めた方が簡単に求められます.
ただ,グラフから求めた場合は測定誤差などによって正確な値が得られなくなるので注意が必要です.
続けて読む
この記事ではシステムの解析を応答波形から行っていきます.
システムの解析は伝達関数の分母多項式から得られる方程式の解である極からも行うことができます.
以下の記事では,極について解説しているのでシステムの解析をしたい方はそちらを先に読んでおくことをおすすめします.
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それでは,最後まで読んでいただきありがとうございました.
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